恐ろしや!海外レンタカードライブ|地獄のベルギー交通ルール&NZランナバウト衝突事故
何を隠そうワタシは無類のクルマ好きだが、ここ10年以上は自家用車を所有していないし、日常的に運転もしていない。最近の足はもっぱら電車、JR東日本専門である。家から歩いて10分に駅が2つあり、そこから首都圏のほぼ全ての主要な場所に1時間以内にアクセスできるからだ。それにこんな都会でクルマを持つということは、セミリタイア民のワタシにとっては、耐えられないほど無駄な出費を強いられることになる。
最近では近所に便利なタイムシェアも増え、どうしてもクルマが必要な時はそこで借りることも簡単にできるようになった。便利な世の中になったものである。
そんなワタシでも、最近運転免許証の更新をした。めったに使わないので、もちろん指紋すらないピカピカのゴールド免許だ。実際、免許を取って40年以上になるが、日本では事故らしい事故をしたことはなく、運転にはまずまず自信がある。海外に住まいしていた頃は自家用車を持っていたし、旅行や出張でもいろんな国で運転した経験があるので、左ハンドル右側通行も問題なくこなせる。
そんなワタシがクルマの運転で困ったことが、過去に2回だけある。初めて交通事故したのも海外だった。
1つ目はベルギー。2000年代初頭に仕事で6ヶ月ほど滞在していたことがある。現地の会社にはレンタカーで通勤していたのだが、今は知らないが、その頃のブラッセル市内の交通はまさにカオスの一言であった。
何が酷いかというと、徹底的な「右方優先」ルールだ。基本、市街地の信号機のない交差点という交差点では、すべて右から来るクルマが優先される。日本でも左方優先というルールがあるが、ベルギーのそれは全く逆の意味であった。こちらは太い道を直進しているのに、交差する細い右側の道から来るクルマが全く一旦停止せず、こちらをチラリとも見ずに右折してくるのだ!こんな恐ろしいルールがまかり通るのだろうか?この信じられない交通ルールのおかげで、直進する時は常に右側からクルマが来ないかどうか注意する必要があり、もう真っ直ぐ前を見て運転なんかしてられないのだ。
これが街中のランナバウト(ロータリー)でも同じなので、ひとたびランナバウトに入ると、右側からどんどん入り込んでくるクルマでなかなか前に進めなくなってしまう。朝の通勤時間などは、当然ランナバウトは大渋滞となる。冗談のような本当の話で、EUの本部があってヨーロッパ各地のクルマが行き交う街にも関わらず、このローカルルールを貫いていたのだ。我ながら、こんなところでよく事故せずに6ヶ月乗り切れたと思う・・・。
2つ目はニュージーランド。クライストチャーチの空港でレンタカーを借り、意気揚々と空港駐車場から乗り出してしばらく行ったところに片側2車線の大きなランナバウトがあった。右手方向からランナバウトに進入してくるクルマは見えたが、そのクルマが内側車線に入ったので、ワタシは左車線から入って2つ目の出口に向かおうとした。ところが1つ目の出口に差し掛かったとき、内側車線を走っていたそのクルマが急に左折を試みてきてワタシのクルマの鼻先に衝突したのだ!
おいおい。確かにワタシは左車線からランナバウトに入ったが、1つ目の出口では左折ウインカーを出しておらず、これであれば2つ目の出口まではそのまま走行できるはずである。これはNZのみならず、世界共通のランナバウト通行ルールだと思う。内側車線から強引に左折して被せられれば、逃げ場はないのは当たり前だ。到着早々の事故、しかも人生初の事故に、もう怒り心頭であった。
現場に到着した黒人ポリス(なぜか海外では黒人ポリスばかりに縁がある)に、「うんうん、オマエの言うことは分かった。裁判したらオマエが勝てるかもしれないが、それには最低4週間掛かる。旅行者でレンタカーならばここで示談したほうが得だろ?なっ?」とたしなめられ、悔しいけれど歯ぎしりしながら空港レンタカーに事故車を返しに戻り(幸い自走できた)、別のレンタカー会社からクルマを借り直す羽目になった。壊したクルマのレンタカー会社では借りられないのだ(おそらくブラックリスト入り)。
あれから10年、もうセミリタイアしているので、金食い虫のクルマは一生持たないつもりである。年々知らず知らずに衰える運動神経のおかげで、意図せず加害者になっても嫌だし。運転免許証の更新も、今回が人生最後になるかもしれない。
いずれも忙しく海外を飛び回っていたあの頃の苦い経験だが、今となってはどちらも良い思い出である。