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#10 『嫌いながら愛する』誕生のきっかけ

『夜が明ける』の撮影は2年かかり、自分の成長を感じられる一方、やりたいシーンができなかったという悔しさも少しだけありました。
撮影真っ只中には、もう一本長編を撮ろうとはとても思えませんでした。
しかし、その悔しさからか撮影が終盤になるにつれ、「もう1本撮れるかも」という根拠のない自信が湧いてきたのです。

そうこうしていると、「20代後半の男が淡々と日々を過ごしていく物語」というアイディアが浮かんできました。『夜が明ける』の最後の編集作業をしながら、もう一方の物語がずっと頭に残っていました。最初の上映会が終わって、本格的に脚本を書こうと思ったのが2023年の夏から秋ごろ。グッドウォッチメンズに「もう一本撮りたい」ことを伝えると、さすがに驚いている様子でした。

それから、なんとなく浮かんだ「よけいなこと」という仮タイトルをつけて、脚本を書いていったという流れです。
この脚本は、メンバーに見せて反応が思わしくなければ、すぐにボツにするくらいの気持ちで書きました。次はもっと面白くしてやるという気概に満ちていました。
どうであれ、長編映画を一本完成させた経験は、とても自信になったと思います。

やはり振り返ると、いい意味で「夜が明ける」に対して未練というか、すべてをやり切れなかったという経験が、原動力になっているなと。

また、今回の作品では撮影の体制やルールをもっと明確にしていこうとも考えていました。
少人数での体制は、どうしてもメンバーに負担をかけてしまいます。
私が尊敬する深田晃司監督は、自身のSNSに、監督という立場を利用したハラスメントを行わないことを固く誓っています。

これに倣い、せめて「これは自分はやらない」という指針を掲げ、自分の熱量に程よくブレーキをかけて、メンバーの心理的安全性が保たれる状態を目指しました。
そうして諸々の地盤を固めていくことで、自分の制作への気持ちが高まっていくことを感じる日々だったことを思い出します。

次回は、より具体的に『嫌いながら愛する』の脚本制作過程を書いていきます。
お楽しみに!


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