愛聴盤(18)内田光子さんのモーツァルトのコンチェルト

内田光子さんが、ジェフリー・テイト氏の振るイギリス室内管弦楽団とセッション録音したモーツァルトのピアノ協奏曲全集。この名盤の価値は約40年経った今でも色褪せない。

この極上の演奏に気持ちをゆだねる時の幸福感。ワイン愛好家は、高級ワインを味わう時にこのような甘美さに浸るのだろうか。

内田光子さんのピアノは美しさの極み。タッチもリズムも、モーツァルトを弾くために生まれてきたのではないかと思えるほど。

テイト氏の指揮ぶりも実に好ましい。一音たりともおろそかにせず、音楽は自然に流れていく。そう、モーツァルトは、こうでなければならない。遅すぎても速すぎてもいけないし、流れが滞ってはいけない。

PHILIPSの録音も素晴らしい。内田光子さんの豊かなピアノの粒たち、オーケストラのまろやかで艶やかな音色が実に明瞭だ。程よくホールトーンも含まれているのも良い。月並みな表現ながら、目の前で演奏しているかのような臨場感がある。

以前、他の記事にも書いたが、私は病気療養中にこの演奏に救われた。CD10枚からなるピアノ協奏曲全集は、死ぬまで手放せない。

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