vol.10 Enjoy Your City Life...大都市からの脱出、ストリートビュートリップ、都市とフィクション
2020/09/10 配信記事
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知らない都市に旅に行った時、その場所で暮らすように息をしたいと思う。そんな時に重要なのがキッチンだ。料理をするという行為は、ある意味、日常のリズムを整える、儀式みたいなものでもある。買い出しのために、滞在拠点の周辺を回り、スーパーの種類や値段、レストランの雰囲気を、疲れるくらい歩いて見てまわる。そうすると、その地域の人の暮らしやカラーが、解像度高く見えてくるのだ。食の営みの中には、人々の暮らしが滲み出ている。そういった風景が、大型の商業施設に飲み込まれるのではなく、街に小さく、たくさん溢れていてほしいと願う。そんなことを考えながら書く、今週のニュースレター。
by Yukako
🎧 Podcast New Release
【#22】GUEST TALK🎤 食と建築の研究者、正田智樹さん
👉https://bit.ly/32c7XJZ
「美味しさを取り戻す建築を、考えていきたい。」
そう語るのは、「食と建築」をテーマに、世界中の地域を訪れ研究してきた、正田智樹さんだ。1980年代に始まったスローフード運動(伝統食や地域の食を守ろうという運動)の原点・イタリアを中心に、生ハムの工房、ワイナリーなど、その地域の自然環境を生かした食風景と建築の事例を教えてもらった。食産業がどんどん効率化されるなか、どこまで伝統的な製法や環境を守るべきか、考えさせられた。
👀 Good News of the Week
Pinterest、サンフランシスコでの大規模オフィス計画破棄
写真共有サービスの大手・ピンタレストが、サンフランシスコに新たに建設予定であった大規模オフィスの賃貸計画を破棄することを発表した。49万平方フィート分の賃貸オフィスで、契約破棄に伴うキャンセル料は、8950万ドルに及ぶという。近年のシリコンバレーにおけるオフィススペース獲得競争には凄まじいものがあったが、リモートワーク化に伴い、これから多くのテック企業が、サンフランシスコのような高コストな大都市から離れはじめる可能性は高い。例えばフェイスブックは、高コストなベイエリアを離れ、より安価な場所でリモートワークを行う社員に対しては、給料額を見直す方針を発表している。リモートワーク化に伴う世界の不動産状況の変化から、今後も目が離せない。
アーティストたちが描く、世界のストリートビュートリップ
ロックダウンや移動の規制に伴い、まだまだ自由に旅することができない日々が続いている。そんななか、アーティストたちがグーグルストリートビューを使って、かつて旅した風景や、旅してみたい異国の風景を描き始めた。Alyce Tye氏は、マイアミからパームデザートまでのロードトリップを描いているのだが、その一枚一枚の光や色がとても美しく、次はどんな風景が現れるのか、ワクワクさせられる。辰巳菜穂氏も、行ったことのないフランスの路地やデトロイトの風景など、ストリートビューを使い世界中の様々な路上風景を描いている。彼女たちの作品を見ていると、日常から心地よくエスケープできる。皆さんも息抜きに是非、ストリートビュートリップを楽しんでほしい。
👭 Our Urban Diary
『The City & The City』都市とフィクション by Mariko
イギリスのファンタジー作家、チャイナ・ミエヴィルによるSF小説『The City & the City』を読みはじめた。パリの建築事務所・MICROCITIESによる同じタイトルの記事を読んだことがきっかけだった。この小説は、地理的には同じ空間を共有している2つの架空の都市(BeszelとUl Qoma)が舞台となっている。空間を共有しているにも関わらず、この2つの都市に住む住民は、お互いの姿が見えない。この不思議な設定から物語が進んでいくわけだが、MICROCITIESの記事では、このアナロジーを、マスツーリズムにより二元化した現代の都市に転用させている。都市空間の一部(観光名所)をパッチワークのように繋ぎ合わせ消費行動を行う観光客と、観光化による弊害や変化を煙たがり、観光客を避ける地元民。なるほど、とニヤリとしてしまった。フィクションには、現実の世界を別の視点で分析するための突拍子もないヒントが詰まっている。『The City & The City』を読み終わったら、次もなにか、フィクションを読んでみたい。
千葉が、結構面白い。 by Yukako
最近、千葉に引っ越す知り合いが増えてきた。千葉というと、キャンプにいくために海や山にいくことはあったのだが、そういえばあまり街の方には行ったことがなかった。以前、ポッドキャストのカクテル企画に出演してもらったHELLO GARDENのイベントをきっかけに、車で西千葉に遊びに行ってみた。千葉大学にほど近い住宅街の広場にHELLO GARDENはあるのだが、イベントのない時は、可愛い椅子がそのまま置いてある(盗まれないのがすごい)。訪れる人たちの年齢層も様々で、みんなに愛されている居場所なのだという感じが伝わってくる。ここにきて驚いたのが、ZOZOTOWNのオフィスが真横にドカンと建設されようとしていることだ。そしてその目の前には、だだっ広いスケートボードパークが出来上がっている。ただ、なぜか柵で囲われていて中に入れない。こじんまりした駅前には、前澤さんが置いたという「LOVE」のオブジェが唐突に置かれている。なんとも不思議な光景だ。今後ZOZOTOWNの新オフィスでは、市と千葉大学と協定を結び、まちづくりにも貢献していく予定とのこと。ただ、あまりにも唐突に塗り替えられてしまう風景に戸惑う住民も多いよう。さて、どうなっていくのだろうか。千葉から目が離せない。
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石川由佳子 / アーバン・プロジェクト・ディレクター(WEB/instagram)
杉田真理子 / 編集者・リサーチャー(WEB/instagram)