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今夜も召し上がれ よく焼きの焼きそば

第23夜 よく焼きの焼きそば

 食材が余る。
 近くのスーパーは日曜がポイント3倍デイなので、1週間分とまでは言わないが、まとめて買い物をする。
 人並みよりもりもりとよく食べる俺だが、予定外の外食や、疲れ果てて帰るが早いか布団に潜り込む日が多い週は、冷蔵庫の中身が減りきらないのである。
 俺だって、考えなしに買い物をしているわけではない。
 本が増えたので本棚を増やしたら、冷蔵庫の前に立って扉を開けるには少々余裕がなくなり、結果として冷蔵庫の中身が把握しづらくなったのも悪い。
 だが、俺とて食材を余らかしゴミにするのは本意ではない。
 そういうわけで、今日みたいな土曜の夜には、期限を切らしたり今にも切れそうになったりしている食材の食べ切り大会を開催するのである。

 コンロにフライパンを置き、冷蔵庫の前にしゃがむ。
「大体、なにがあるんだ? 俺のお城には」
 まず、焼きそば麺。これは3食入りのをいつぞやのお昼に食べた残りの1玉である。賞味期限は一昨日。その下にもやし、一昨日なんにも考えずに買ってきたやつ。チルド室のソーセージは、はるか昔にオムライスを作りたくて買ってきたものの片割れだが、賞味期限が4日前……ソーセージだし大丈夫だろう。開けてないし、チルド室だし。……たぶん。それからひとつ残った卵だ。日付の書いてある紙が何処かへ旅に出たので、こいつも食べる。はるか昔のものでないことを祈って。
 あと牛乳が開けてから3日経っているので、こいつは長めにチンである。
 こんなもんだろうか。
 ふと見ると、干からびかけた長ネギが電子レンジの陰に落ちてい……置いてある。買い物帰りに適当に置き、そのまま忘れていたに違いない。
 切り口を落として表面を剥けば食べられるな。

 そういうわけで、加熱に絶大な信頼を置いた焼きそばが、今夜のメニューと相成った。

 まず、小口切りにしたネギとソーセージ、焼きそば麺をフライパンに入れ、酒をべしゃべしゃにかけて蒸し焼きにする。
 俺が思うに、肉や魚はこういう風に使おうというあて﹅﹅があって買ってくることが多いから、案外傷ませない。野菜はなんとなく買ってくるせいで、干からびたり溶けたりしやすいのではなかろうか。
 俺の冷蔵庫の管理が悪いという指摘はもうぐうの音も出ないので、なしでお願い致したい。冷蔵庫に一覧表を書くためのホワイトボードシートを貼ってみたりしたのだが、どうも無精で続かない。あと、扉を閉める力が強くて、毎度ホワイトボードマーカーを吹き飛ばすのも悪い。
 焦げ目のついた麺を適当にほぐして、卵を割り入れる。溶き卵にするのが面倒なので、具を寄せて作ったスペースで黄身を割る。
 よくすすいでから電子レンジにかけたもやしを入れ、再びふたをする。
 煮込み料理でもなんでも、弱火でてろてろと調理するのが好きなのだが、今日に限っては強めの中火でウワァーである。高校の家庭科の先生は、再加熱は1分で理論上は充分だが加熱ムラというものが必ずあるので3分やる!と仰っていたので、そのまま3分ウワァーッとやる。
「焦げた!」
 まあ焼きそばなんてもんは多少焦げたぐらいが美味しいまである料理である。
 ソース味の粉を入れて混ぜ合わせ、フライパンごと食卓代わりのローテーブルに持っていく。
 これでお腹を壊そうもんならだいぶ貧すればなんとやらではあるが、そも食費を切り詰めに切り詰める必要があるわけでもない。無精の精算で中っているということは単に頭がなまくらということになるな。
「それはいやだな……」
 長めにチンした牛乳にカフェオレの粉を入れ、ローテーブルに置く。
 まあよく焼いたので大丈夫だろう、たぶん。
「いただきます」

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