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今夜も召し上がれ オムハヤシ
第24夜 オムハヤシ
ビーフストロガノフを覚えてからというもの、週に1回ぐらいは作っている。俺は、気に入ったものを食べ続けることが、まれによくある。
前は、日高屋の生姜焼き定食だった。日高屋がアルバイト先に近いので、朝から夕方まで働いた後に日高屋に行き、必ず生姜焼き定食のご飯大盛りを頼む。肉がかなりしょっぱいし、マカロニサラダにスープもつくので大盛りにしてもご飯が足りなくなることがある。いつもいる茶髪の店員さんからは、いつも同じ時間に目立つ奴が来るなと思われていたかもしれないし、大盛りにした上にライスを頼む大食い野郎だと思われていたかもしれない。
目立つ容姿に大食いなのは事実なのだが。
日高屋はお手頃価格でいいのだが、ビーフストロガノフはビーフがお高い。100グラム400円とかちょっとした金属なんじゃないか。まあ俺が買うのは298円なのだが。
ということで、今回は牛は牛でも牛のひき肉で作ってみることにした。
手順は前回と同じだ。薄切り肉をひき肉に変えるだけである。ひき肉は130円ぐらいなので貧乏性にも手が出しやすい。
せっかくなので、ビーフストロガノフを作った記事をご覧になってみていただきたい。はじめてお酒を買って楽しそうにしている俺がいるので。
メタい話はここまでにする。
ちなみに、諸説はあるがビーフストロガノフをご飯にかけるとハヤシライスになるらしい。ビーフストロガノフにクリーム(本来はサワークリーム)を入れなかったやつがデミグラスソースだとか。
そんなこんな言っている間に、玉ねぎとひき肉を炒め、マッシュルームを入れた。玉ねぎは肉の形状に合わせてみじん切り……というにはかなり荒いが、細切りを短く切って入れてある。煮込んでしまえば大した違いはないのだが。
それから小麦粉だのトマト缶だのを入れて、煮込む。
余談だが、ワインはおこちゃま舌の俺には味の情報量が多く、飲むことはおよそないだろうということが分かったので、料理用の赤ワインを買った。紙パックで便利である。
もうひとつおまけに余談だが、ワインというものはおおよそヨーロッパの室温ぐらいが美味しいのだと、ワイン党の紳士に教わったことがある。ワイン党という言い方があるのかは知らないが。そう言っている隣で、白ワインに氷を放り込んで飲むお兄さんがいたので、基本的に酔っぱらいの言うことは信用していない。
話は調理に戻る。初回少しすっぱかった反省を踏まえ、少し多めにケチャップを入れることにした。醤油の代わりに甘みのあるめんつゆをいれてやろうかとも思ったが、出汁風味のビーフストロガノフでは格好がつかない。
格好がつかなくたって食べるのは俺なのだが、ともかくも10分煮込み、牛ひき肉のストロガノフの完成である。
どんぶりのご飯にかけ、出しっぱなしのPCやノートにいとまを与えて作ったスペースに置く。
「いただきます」
写真を撮り忘れたので、白米にひき肉のビーフストロガノフをかけたものを想像していただきたい。
感想は、固い。
牛肉の、ほろほろに煮崩れた食感がこの料理の醍醐味のひとつだと俺は思っていたのだが、それが見事にない。美味しいことは確かなのだが、むきゅむきゅした食感は、よくない意味で給食を思い出す。
しかしこいつを失敗にはしたくないぞ、ということで、翌日である。
今日は大学が休みなので、昼頃にのそのそ起き出し、冷蔵庫にまるごと突っ込んでいた鍋を取り出す。最近は夜が本当に寒いので、昼間に寝る族になりそうで危ないところである。
ひき肉のビーフストロガノフに火をいれながら、卵を3個割ってよく溶きほぐす。大体沸騰して3分ぐらい経ったところで火からおろし、鍋掴み兼鍋敷きの丸いキルトをローテーブルに敷いて、お鍋は一旦置いておく。
それから、フライパンを温め、溶き卵を薄焼き卵にする。
コンロがひと口しかないとこういうところが面倒である。
薄焼きというには少々わんぱくな厚みになったが、まあよしとする。半熟ぐらいでお皿にうつし、解凍したご飯をフライパンの中へ入れ、ローテーブルの方へ。
鍋のなかから、固形物の部分を選りすぐってご飯の上に乗せる。
焼き目をつけながらひき肉とご飯を混ぜ合わせ、水分を更に飛ばす。
中も外もビーフストロガノフのオムライスを作るのだ。デミグラスソースのかかったオムライスもあるし、ひき肉でケチャップライスを作ることもあるし、どっちも美味しいに違いない。
そんなことを考え、内心ではそっくり返って誇っていると、ふと問題に気づく。卵はもうお皿に乗せてしまったが、今中身を作っているということは、卵を一旦どかしてお皿に中身を盛り、上から卵をかけるのが面倒くさいということである。洗い物を増やすか、超能力を身に着けるかせねばならない。
まあ、超能力は一朝一夕で身につく物でもないので、出来上がった中身は別のお皿でいい感じに盛り付けてから、薄焼き卵を乗せる。
フライパンにもう一度、ひき肉のビーフストロガノフを入れ、強火で少し煮詰めてから、卵の周りを水攻めにするようにかける。浅いお皿を使っているうえに、ご飯の量がお皿に対して多いので、少しでも傾ければ簡単にこぼれそうだ。
季節に関係なく、この調子でもりもり食べるので、食器が喋り出したらまずおのおのの推奨容量を説かれるに違いない。
マグカップを洗い、冷たい牛乳を電子レンジで温める。
冷たい飲み物は好きだが、エアコンの効きが悪い俺の部屋では辛い。
ビーフストロガノフから錬成したオムライスのさらにフォークを置き、床は冷たいので、あぐらをかいた足をブランケットでくるむようにして座る。
自炊のいいとこは、こうやってどうとでもリカバリーが効くとこだよな。
「いただきます」