三匹の子豚を海へ
母と父は泳げない。
義務教育に水泳がなかったからだ。
でも二人は海の素晴らしさを知っていた。
二人は三匹の子豚を連れて海へいった。
母「沖に気をつけるのよ」
母は三匹の子豚に注意を促す。
しかし、三匹には年の差があった。
一匹めは10歳、二匹めは7歳、三匹目は6歳
一匹めの子豚は、意味を理解し頷く。
二匹めの子豚は、海に気がいき聞いてない。
三匹めの子豚は、頷くが沖を知らなかった。
一匹めはワーイ海だー!と一番乗りで海水の中に身を浸した。
二匹めと三匹めもあとに続く。
一匹めは一番遠くに行って見せるとばかりにスイスイと海の中を泳いでみせた。
二匹めも休み休み大きな海と呼吸を合わせ先へいく。
一匹めは泳ぐことの楽しさと自由を勝ち取り、二匹めは海の中の宝物に心を踊らせている。母と父は砂浜から子豚たちを眺めている。
三匹めは砂浜にいる親の近くから離れることに戸惑いながらも、浮き輪という名の保護があることで二匹のあとに続いてみせた。時折浮き輪と共に海面をクルクルと回る。
冒険したい心が湧き出ていた。
何かが起きても浮き輪が護ってくれるだろう…。
次第に足が地につかなくなる。
波の谷が広がる。
足先にひんやりと感じていた海の中の温度がへそあたりまで登ってきていた。
一匹めは、ある地点を境に引き返し始めた。
遅れて二匹めも、同じ地点に足を取られたが、引き返すことに成功した。
さらに遅れて三匹め、同じ地点を通過したが、浮き輪属性は引き返せなかった…!
全力で足をバタつかせても海の力の前では無力な雛であった。
一時自力でもがいてみたが無理だった。あらん限りの全力を振り絞るが、全く前進できない。海の力の前に先程までは味方だった浮き輪も足を引っ張っているとさえ思われた。
このままでは陸地に戻れない。
海の中に棲む巨大な怪物に食べられてしまう。
こ、怖いっ!
三匹めは、二匹めを呼んだ。
「ぶひー!ぶひひー!!」
中々、二匹めは気づかない。
が、数度の呼び声に気づいて三匹めと合流した。
しかし、ここで問題が起きた。
二匹めの力では自力脱出は可能であったが、三匹めを救出するだけの余力はなかった。
足に力が入らなくなる。
海と戦う二匹は体力を消耗していく。
このまま二匹は海の中に飲み込まれるかもしれない。
自分のせいで二匹めを巻き込んでしまった。どうしよう。
すると、一匹めが二匹がいないことに気づいた。
二匹を探している。
一匹めは、二匹と合流した。
そして、二匹が海の中に呑み込まれそうになっているが、一匹めは首を傾げた。
この程度の波に手こずることがわからないという一匹めを二匹めは空と並行を保った顔面が海の中に沈みつつある中で言葉で説いた。
最初は三匹同時脱出を試みたが、浮き輪がない二匹めの残りの体力に一匹めが気づく。二匹めは自力で陸地へ、三匹めは自分に任せろと一匹めが再提案し、救出活動を開始した。
この時、三匹めは、一匹めの行動がわからないでいた。
一匹めは、三匹めを好ましく思っていなかったからだ。だから、三匹めは二匹めを呼び、一匹めを呼べなかった。
三匹めは一匹めを疑ってみせた。途中で浮き輪の紐から手を放すかもしれない。
そんな疑いをよそに
一匹めは浮き輪の紐を握り、我々人間は元々は海の生き物であるというダーウィンの進化論を証明するかのように、そして先程までの二匹が海と戦っていたのがまるでなかったかのように、あっと言ってる間に陸地に三匹めを戻した。
こうして三匹の子豚は無事に陸地に辿り着いた。
一匹めは母に起きたことを話し、母は驚き少し動揺したが、三匹が無事に帰ってきたので苦言しなかった。
三匹めは、一匹めに謝意を伝えそびれた。そして、一匹めの誠意を疑った自己をこの時はまだ恥じてはいなかった。
家族は揃い、帰路についた。
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