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永遠のテンポエムチャイルド その5

お昼休み

ふたりはいつものように

お弁当を

食べながら

話を続けます。


十詩子:

朝の話の続きですけど

大学ってどうなんですか。


敬子:

私も高校出て

すぐこの会社に就職したから

大学のことはわからないわ

でも大学に行った友達から聞いた話では

大学生は

あまり勉強しないらしいよ


十詩子:

そうなの

大学って勉強するところじゃないの

悟さんも

あまり勉強してないの


敬子:

それはわからないわ

専門学校に来るくらいだから

勉強しているんじゃないの


十詩子:

そうかも知れないませんね

ところで私の部屋のことだけど

どうすればいいでしょうか


敬子:

まだ言っているの

そうね

格好いい

かわいいお部屋は良いよね

別に悟さんが来なくても

かわいいお部屋にするのは良いよね。


十詩子:

手伝って

敬子さん手伝って下さい。


ふたりはその日会社を定時に退社して

近くの家具屋さんに行くことになりました。ふたりは

『十詩子の部屋 可愛い化計画』に従って

家具屋さんに行きました。


何か考えているものがあって

家具屋さんに行ったのではなく

ただ漠然と

どんなものか見に行ったのです。


阪神尼崎駅前の家具屋さんは大きくて

いろんな家具が飾ってありました。


十詩子は

可愛い家具がないか

敬子と一緒に探して回りました。


猫足の家具なんか

気に入ったのですが

今の十詩子には

買えるだけのものではありませんでした。


展示している家具を

ズーとみて歩くと

カーテンのコーナーがあって

可愛いカーテンが

あったのです。


十詩子:

このカーテン可愛い

こんなカーテン

私のお部屋に

似合うかな


敬子:

そうよね

良いかもしれない

こっちのカーテンも良いんじゃない


十詩子:

本当

こっちの方が良いかも

値段も手頃だし。

でも内のお部屋

カーテンレールもないし

どうしよう


ふたりは悩んでいると

店員がやってきて

カーテンレールが無くても

可愛くカーテンを吊る方法を

教えてくれました。


それで早速買って帰るました。

晩ご飯も食べずに

カーテンを吊ることにしました。


窓の上の

木の部分に

押しピンで

買ってきた

水玉模様のカーテンを

留めていきました。


真ん中を少し重ねて

二枚貼ります。


それから壁側も

ピンで留めます。


それからカーテンの真ん中を

たぐり寄せて

カーテンを留め付けます。


両側に

カーテンを寄せて真ん中を開けると

窓が

部屋の中で

可愛く変身しました。


十詩子は満足でした。

それから

ニコニコしながら

夕ご飯を作って

またニコニコしながら

食べて

満足して

床につきました。


翌日

敬子を呼んで

部屋を

見てもらいました。


敬子:

すばらしいわ

前の部屋とは

全然違うんじゃない

こんな事で

変わるなんて

もっとあるかも知れないね


十詩子:

これで悟さんが来ても

問題ないかも知れませんね

悟さん来るかしら


敬子:

悟さんを

お部屋に呼ぶの

それって

少し

危険じゃないの


十詩子:

危険って?

危険なの

どう危険なの


敬子:

女ひとりの部屋に男の人を

呼ぶんでしょう

それは危険でしょう。


十詩子:

いやーだ

敬子ったら

そんなこと

悟さんにはないわ


そんな話をしながら

十詩子の作った

マメご飯を

ふたりは食べました。


水曜日になりました。

先日の晩に

炊いた

マメご飯を

お弁当に詰めました。


マメご飯は

傷みやすいので

入れようかどうか迷ったのですが

色が綺麗だし

早く行きたいのに

それしかなかったので

お弁当に入れてみました。


前日より用意していた

ノートや筆記用具を入れた

鞄も用意していました。


前に聞いた

充分なお化粧をして

国鉄尼崎駅に出かけました。


時間より

だいぶ早く

着いたのです。

コンパクトを見て

身なりを

点検しました。


待っていると

悟が地下道をくぐって

早くやってきました。


悟は

試験の時に出会った時と

同じ服装でした。


悟:

おはよう

十詩子さんだいぶ待ったの


十詩子:

おはようございます。

今着たところです。


悟:

じゃ行こうか

鶴橋まで切符を買って


十詩子:

鶴橋?

なかなか良い駅名ね

鶴と関係あるの


悟:

そうだね

鶴と関係あるのかな

わかんないわ


ふたりはそんなことを良いながら

改札で

切符を切ってもらって

ホームに入っていきました。


悟は

十詩子の

白いワンピースに

黒い長い髪が

とても眩しく見えました。


大阪で乗り換え

環状線に乗って

鶴橋まで行きました。


鶴橋で

近鉄線にに乗り換え

大学まで行きます。


どちらの電車も

混んでいました。


十詩子は

自転車で

通勤してましたから

朝のラッシュが

こんなに大変だと言うことを

初めて実感しました。


悟に

「混んでるね」

と言いながら

乗客に押されて

悟とにひっ付いたとき

十詩子は

ビーとした感覚を

体に感じました。


十詩子は

混んだ電車も

「いいな」と思いました。


「こんなんだったら

毎日通いたいもの」

とも思いました。


そんな通勤ラッシュで混んだ電車を降りて

大学通りを大学に向かいます。

大学へ行く人の波が

川のように

流れていきました。


十詩子:

すごい人ですよね。

大学までズーと続いているのですか。


悟:

そうかも

大きな大学だから

でももう少し遅い時間なら

付属の高校の登校時間と重なって

もっと混むんだよ

それがいやだから

少し早いんだけど

この時間にしています。


十詩子:

そうだよね

そんなに混んだら

大変だものね

(でもそれ良いかも

今度来るときは

少し遅い時刻にしよう)


そんなことを考えながら

大学に着きました。


悟:

ここが大学です。

ちょっとしたビジネス街でしょう


十詩子:

そうね

御堂筋のビジネス街のようね


悟:

そうだよね

話によると

1年が経って

新しい学生が入ると

新しいビルが建つんだって


十詩子:

そうなの

悟さんが

勉強している教室はどこなの


悟:

あちらのあの角の

建物

あの建物の5階


十詩子:

高い建物ね

ちょっとドキドキする。


悟:

別になんてことないよ

心配しなくて良いから


ふたりは建物の中に入っていきました。

悟は建物に入ると

右側にある掲示板を見て

休講がないかどうか調べます。


その日は

休講がなかったので

左側の階段か

エレベーターで

5階に上ることにしました。


悟:

5階に上がるんだけど

階段かエレベーターか

どちらにする?


十詩子:

エレベーターがあるの

学校なのに


悟:

他の教室には

エスカレーターがあるところもあるんだよ


十詩子:

そうなの

私の会社でも

本社に行かないとないのに

一度エレベーターで上がりたい


ふたりはそう言って

エレベーターに乗って

5階に上がりました。

エレベーターを下りて

右に曲がり

それから左に曲がって

大教室に入ります。


階段教室で

300人が入れる教室です。


早いので

誰も着ていませんでした。


十詩子:

早いのね

まだ誰も着ていないよ


悟:

そうだね

大体僕が一番乗りなんだ

一番に着たものは

冬はストーブを点け

夏は窓を開けるんだ

窓を開けるよ


十詩子:

悟さんは

早く来るのね

窓を開けるの?

じゃ私こっち側を


悟:

ありがとう


ふたりは窓を開けて回りました。


大教室なので

窓は数多いのです。


ちなみに

締めるのは

掃除のおばさんです。


全部開け終わると

悟は

中央の

前から2列目の

端に

十詩子を座るように言って

自分はその隣に座りました。


十詩子:

こんな前で問題ないの


悟:

前の方が

先生からは見えにくいんだよ

いつも僕はここなんだ


十詩子:

そうなの


そう言っていると

クラスメートが

入ってきて

悟に

「オッス」と言いました。


悟も「オー

今日は友達来てるんだ

よろしく」と返事しました。


悟は友達に

十詩子を紹介しました。


悟の男友達

たくさんやってきて

十詩子の周りに集まりました。


悟の友達は

通称「最前列5人組」と呼ばれ

教壇の前の席に陣取る

五人衆です。


十詩子について

色々と

尋ねました。


「何歳?

どこに住んでいるの?

学校はどこ?

学部は?

彼氏いるの?」

などと

責任のない質問でした。


悟は

「そんなこと答えなくても良いだろう。

先生が来るよ。」

と言いました。


そんなことを言っていると

先生が入ってきました。


学生達は

席に座りました。

公衆衛生学の先生は

講義を始めました。


「今日は空気環境です。

湿り空気線図については

どうのこうの、、、

こうだああだ、、、、

そうだそれだ、、、、、

潜熱と顕熱、、、、」

十詩子は

先生の講義内容を

ノートに口述筆記します。


悟は

公衆衛生学に興味があるのかと思いました。


一方悟は

ノートに筆記するのではなく

教科書に線を引いたり

カギ括弧を書いたり

書き込んだりしました。


講義は続きます。


「夏の打ち水や夕立は

気温が下がるが

体感温度は変わらない

、、、、

そうだこうだ、、、、

と1時間半の講義が終わります。


先生は

黒板を消して

帰って行きました。


十詩子は

何となくしんどくなりました。


十詩子:

悟さんって

ノート取らないの?


悟:

僕は高校の時から

ノートは取ることはないんだ

先生が言っていることに

集中して聞きたいんだ。


ノートに筆記してたら

集中できないだろ

教科書を読んでいる時は

教科書にカギ括弧で囲む

強調して言っている時は

下線を引くんだ。


教科書以外で言ったことは

教科書の端に書き込むんだ

ところで十詩子さんは

すごいノートが出来たね

公衆衛生学好きなの?


十詩子:

初めてよ

公衆衛生学って言うのは

こんな事悟さんは勉強しているんだ

おもしろい?


悟:

勉強は

いつも新鮮だよね

わからないことを

教えてくれるんだから

でもすべてが

理解できるかというと

そうではないよね

人間には

特に私には限度があるもの


十詩子:

そうよね

私も

勉強は好きよ


悟:

なぜ大学に行かなかったの


十詩子:

、、、、、、、、、、、、、、、、

、、、、、、、、、

、、、、、、


悟:

ごめん

いけないこと聞いたかな

ごめんね。


話していると

2限目が始まりました。

生物の時間で

生物の先生は

ノートを

十年変わらず

読み上げる先生だそうです。


十詩子にとっては

講義の内容は

高校の生物と多少重複するところがあったけど

興味がありました。


同じように口述筆記しました。


悟は

同じようにノートを取らずに

教科書に直接書き込んでいました。


生物の講義は

だいぶ早く終わりました。


昼になると

大方の学生は

学食か商店街の食堂に食べに行きました。

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