"アートやデザインで社会と人々の人間関係をふたたびつなげる多くのことができると思っています”:Q&A 台湾編④
アート&デザインの力をつかって、社会的に取り残された人、困難な状況にある人たちに寄り添えるような福祉的観点のプロジェクトを多く行っている台湾のデザインスタジオ, Sandwishes Studio(サンドウィッシュスタジオ)の代表Liさんに色々聞いてみました。
このデザインスタジオ本当ーーーーに多種多様なユニークな活動をしているんです。
こんなユニークな活動をしている団体が台湾にあるんだ!というのが、プロジェクトを知れば知るほど深まる驚きでしたが、最初は名前を聞いたときに「サンドイッチ?」とスタッフの大半が勘違いをしておりました。
スタジオが関わった子供たちの遊び場づくりのデザイン。子供たちは「光線プラットフォーム」に登り、手間の銀色のUFOから広げられた木登りネットを使用しようとしているー という遊び心あふれるデザインです。
Q.コロナになってどうでしたか?
A. 最初は台湾は他の国にくらべるとウィルスの影響を受けていなかったんですね。なので、プログラムを担当してくれるスタッフの数は、去年後半で逆に増えました。おととしまでは私たちのスタジオは3人のスタッフで働いていましたが、現在は7人です。
Q. その後はどうだったんでしょうか。
A. その後ウィルスによりプロジェクトが遅れていき、今後を計画する難しさが増していきました。
台湾はここ最近ウィルスの広がりが深刻な問題になっています(*注意:最終インタビュー時は5月。台湾では5月から1ヶ月で感染者数が1万人も急激に増加。その後減少し、現在はピーク時のたった4%と再び減少しました)
たった2ヶ月前は私たちはスムーズに働くことができていました。たった1、2ヶ月で深刻さを増しています。
一緒に仕事をしているソーシャルワーカーたちは計画を変更したり、新しいアイデアを取り入れたりしています。スタッフたちは在宅で仕事をはじめました。いくつかのプロジェクトも遅れたり、変更せざるをえない状況なので、一緒に働いているNGOとも今後について協議中です。
Q.ずいぶん色々な他の団体と一緒に活動されていますね。
A. 私は本当に自分たち以外の異なる団体と働くのを楽しんでいます。いつも彼らから学んでいるんです。一人だったり自分たちだけで働くのはとても難しいというのが私の実感です。ほとんどの面白いアイデアや方法は、他の人たちと働いた時に生まれてくるので。
なので、私たちはいつも誰かと一緒にコラボレーションしていく必要があります。そうやって協力してきた団体とは長期的な協力の友人になっています。
私たちは今も昔も変わらずに、“アートの創造性とデザイン” に焦点を当てていますが、彼らの紹介を通してさまざまな社会問題に触れる機会がますます増えています。
レンタルスペースの運営団体とも一緒に仕事をしています。障害のある人のアートを各部屋に展示。残念ながらコロナ禍ではストップしているそう。
Q.美術館と一緒にやったプロジェクトなどは、どういうきっかけで始まったんでしょうか。ミュージアムの方から話が来たのか、それとも自分から提案をされましたか?
A. 美術館の展覧会は公募があり、自分たちで応募しました。
どのようなアイデアがあるかなどをプレゼンテーションしました。
そんなふうに先方からの指示で入札されることもありますし、こちら側から自分たちの活動に適しているものを選んで決めていくこともあります。
美術館の心の病についての展覧会にも参加。詳細は前回のこちらを。
Q. 企画がすごく面白いですね。企画をしたりインタビューをするのはLiさん以外にもいるんですか。それとも外部の人に個別に外注でお願いしていますか?
A. スタッフは全部で7人です。みんなデザインやアートのバックグラウンドを持ったスタッフたちです。いろんなプロジェクトがあるので、それぞれの担当プロジェクトに特化しています。
また、私たちはいつも外部の人と働く必要があるので、いつも外注はしています。自分たちがメインでアイデアを練り上げていくこともありますし、ビジュアルデザインやグラフィックデザインなどでは様々なデザイナーが助けてくれることもあります。
Q.いま台湾の中でLiさんのような福祉とかアートデザインをつなぐようなデザインマインドの高いクリエイターの人は増えていると感じますか?
A. スタジオでデザインと一緒に社会福祉をしているところは少ないと思います。台湾では見つけられないんですけれど、他の場所ではあると思います。
そういう人たちが増えているかどうかでいうと、色々と違うやり方で増えているんじゃないでしょうか。大学と一緒に協働して、専門の研究を深めているスタジオもあると思いますし、あとは今はアイデアがあれば寄付を集めるファンドレイジングという形もありますから。
Q.コロナ禍で生活するようになって、やってみた活動を振り返って思うことはありましたか。
A. オンライン展覧会で観客との交流を進めたりするには今のところまだ困難があるので、経験デザインについてもっと努力する必要を感じています。
経験デザイン(U Xデザイン)とは、、、使ってくれる人の毎日の経験に役に立ちながらも、「楽しい」「使いやすい」「もっと使いたい」と思ってくれる製品やサービスを生み出していくデザインのこと。ユーザー体験を中心に組み立てていく課題解決の手法。
よく例にあげられるのはスターバックス。
コーヒーを提供する喫茶店は山ほどあったのに、スタバが人気を集めているのは「居心地のいい店内」「カスタムできるドリンク」「Wifi無料」「長居O K」「フレンドリーな店員さん」など利用者側の目線に立った仕掛けが散りばめられているからと言われています。
Q.経験デザインが必要と思った理由、もうちょっと聞いてみたいです。
さまざまな社会問題に触れると、「知る」価値のあるたくさんのアイデアに出くわしますが、正しいことを「知る」だけでは十分ではないんですね。
情報や理由付けを自分の中で取り入れながら、変化をおこすには、他の人たちを感動させたり、楽しさといった生き生きとした感情を持ってもらうことがどうしても必要です。
アートとデザインを通して感動してもらうことが私たちの主な仕事です。
それはまた、私自身でもデザインを経験する必要になる理由でもあるんですよ。人々の感情とものごとの言説を組み合わせる状況がデザインですから。
Q.最後の質問です。コロナ禍での新しい暮らしと仕事になって、これからのことについて思うことがあれば教えてください。
私たち全員にとって、感染症が広まってからこの新しい状況に対処するというのは、長期的な愛情を注ぐことだと思います。政府や関連プロジェクトの開発者はこれからのプロジェクト計画のための新しい方法と新しいビジョンを探す必要があります。
私たちにはこうした新しい生活の課題に適応するための新たな考え方と新しいスキル、そして異なった人類の状況に反応するための新たなイマジネーションが必要なのです。
私たちは今でもアートは社会と人々の人間関係を再びつなげる多くのことができるものだと思っています。
Liさん(左上)を含めた7人のSandwishes Studioのスタッフたち。日本が台湾にワクチンをプレゼントしてくれたため感謝の気持ちを台湾から伝えたいとのお話が最後にありました。左:写真 提供 樂山教養院 (心より感謝しますと日本語で書いてあります)
=台湾のシリーズはこれでおしまいです。お読みくださりありがとうございました。また、Liさんスタッフのみなさん沢山のユニークなプロジェクトのご共有ありがとうございました⭐︎=
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[シリーズ台湾編]
*この記事はオンラインでの「コロナ禍における障害のある人の仕事づくり情報交換会」イベントの番外編です。「同じ状況だった海外の団体にも話を聞いてみよう!」と今年の1月〜7月にかけて、たんぽぽの家事務局スタッフ数名がLiさんと話したやりとりをまとめています。
(Uga)
* 本事業は休眠預金を活用した事業です
「コロナ禍を契機とした障害のある人との新しい仕事づくり」は休眠預金等活用法に基づき、公益社団法人日本サードセクター経営者協会 [JACEVO]から助成を受けて実施しています。