遠い日の思い出
お店の営業が終わり、車を運転して自宅に向かう帰り道。
ふと蘇る遠い日の記憶。
また忘れてしまわないように書に記そうと思います。
あれは小学校6年生の春休み。
自分の家に友達3人が遊びにきて1泊するという所謂、お泊まり会。
今までこういった経験はなくお初のお泊まり会。
メンツは放課後、毎日のように、野球、サッカー、ケイドロ、カードゲームをして遊ぶいつものメンツ。
お泊まりという非日常を楽しもうと皆テンションは上がっていた。
自分は何か記念に残そうと、母親に色違いのミサンガ4本を頼んでみんな配る手筈を進めた。
いよいよお泊まり会当日。
みんなを自分の部屋に招き、会が始まった。
始まったはいいものの、皆何をしていいのかわからない。
お泊まり会といえば世間一般的には恋愛トークが相場かと思うが、小6、外遊びに全てを捧げる系男子、そういった感覚は持ち合わせていない。
しかし、何かを思い出に残したい。
そして、4人は禁断の遊びに手を出した。
4人のうちの1人にはゲップを無限に生み出すことのできる逸材が1人いた。
彼の名誉のために名は伏せる。
そしてゲップという表現があまりにも直接的でグロテスクはため、ここでは「魂」と呼ばせていただく。
魂を吐き出す彼のおかげで、我々は意気揚々と宴を開始した。
お泊まり会早々に、食したプリングルスのロング缶の中に魂を閉じ込め、ジャンケンで負けた者が顔の近くでプリングルスの蓋を開放するという、
驚くほど高貴な選べれし者のみに許された遊びとは
真逆の遊び。
皆、これだ!と思い、
何度も何度もジャンケンを繰り返す。
1人は何度も何度も魂を吐き出す。
ディメンターも食い尽くせないほどの魂を吐き出す。
自分もジャンケンに負けて何度か、間近で魂の開放を体験した。
開放した瞬間に、プリングルスロング缶から勢いよく飛び出る魂。遠のく意識。
君死にたもう事勿れ。
脳裏に社会で最近習った与謝野晶子の言葉が蘇る。
俺死にたもう事勿れ。
数多くの魂が居座る一室。
そんなところで眠りにつけるはずがなかった。
皆、体調不良の中、一睡もせずに帰宅。
魂を吐き出した彼は時折本体も吐き出すところだった。
胃酸のように甘酸っぱい想い出となった。
小学校を卒業し、中学生になった春。
みんな、お揃いのミサンガが着けてきてくれたことは忘れない。