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【コーヒー界の風雲児(前編)】グアテマラの少年は、ここではないどこかを夢見ていた

グアテマラ共和国。通称グアテマラ。


メキシコの南に位置し、太平洋とカリブ海に面した中央アメリカの国。
日本では、グアテマラといえば「コーヒー」のイメージがあるかもしれませんが、古代マヤ文明の栄えた地でもあるグアテマラは、観光地としても人気のエリアでもあります。


世界遺産に登録されている古都アンティグア(日本でいう京都のような街)をはじめ、グアテマラ中央高原には、マヤの先住民たちの村々が点在し、村ごとに個性のある織物など、美しい伝統的な民族衣装や、日本の富士山のような3000m級の火山がそびえ立つ景色は、欧米を中心に、多くの観光客たちを虜にしています。

そんなグアテマラで、後に「コーヒー界の風雲児」と呼ばれる。

GOOD COFFE FARMSの代表カルロス・メレンは生まれました。
ときは1981年。現在のグアテマラは観光地として整備されていますが、当時は、1960年から1996年まで続くグアテマラ内戦の影響で、
政治的にも、治安的にも、不安定な時代でした。

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カルロスの父親も当時、石油企業に勤めていましたが、内戦によって仕事や土地を手放すことになりました。紛争に巻き込まれ、家を失ったカルロスのファミリーは、別の家族とひとつの家に住んだり、ひとつのパンや卵を兄弟で分けあったりしながら、明日を「生きる」ことに必死になっていました。

貧しい暮らしを強いられていたカルロスは、12歳のときから自分の手で「お金を稼ぐ」ことを覚えていきます。
日本では、小学生か中学生になろうかという年頃。マーケットで荷物を運ぶ仕事や、建築現場の手伝い、工場でのTシャツづくり、Tシャツの販売など、10代から「社会」に揉まれ、生計を立てることの苦しみを味わいました。

10代前半から、大人の世界に足を踏み入れたカルロスは、人生にとって、「出会い」がどれだけ重要なことか、父親の背中を見て、学んでいきました。当時のカルロスの父親は、ゴルフのキャディの仕事をしながら、グアテマラの名士とのコネクションを広げていき、とある企業の秘書の仕事を得ることに成功していたのです。

カルロスも同様に、人との出会いからイベントマネージャーの仕事を得たこともありました。
人や新たな世界と出会うことが、自分の人生の可能性を広げてくれる。
そう感じたカルロス少年は、いつしか世界を舞台に活躍する飛行機のパイロットを夢見るようになります。

このグアテマラの外には、どんな世界が広がっているのだろう。


カルロス少年は、ハイスクールにあがるにあたって、進路先を慎重に考えました。一般的にグアテマラでは、ハイスクールのトピックス(専門科目)に将来安定したお金を稼げる「経理」や「秘書」を選ぶことがほとんど。

ただカルロスは、保守的な生き方をしたくはありませんでした。
パイロットになる夢に向かって必要なこと。
それはまず語学力だろうと、当時、Tシャツのデザインをして稼いだお金で、語学を学べるスクールに進路を決めました。
そしてその後、パイロット育成のプログラムを調べていくうちに、現実の大きな壁にぶつかることになります。

パイロットのレッスンは、いわば軍隊のような過酷さ。
幼少期から喘息の気があったカルロスにとって、それは耐えられそうにない環境に思えました。パイロットは諦めよう。
でも、カルロスにとって、パイロットになることが「夢」ではありません。
それは単なる手段であり、「外の世界を知ること」こそが彼の夢。
じゃあ、どうすれば外の世界を知ることができるのか。
カルロス少年が、新たに見つけた道が「観光」でした。

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観光の仕事をすれば、グアテマラの外の世界に触れられる。
ここではないどこかに行くために。
カルロスは、自分の夢に向かってすぐに方向転換をして、グアテマラの中心街であるグアテマラシティの観光スクールを見つけ、熱心に勉強に打ち込むことになりました。

カルロスは小さい時から、非常に勉強熱心な少年でした。
仕事をしながらでも、100点をとれる子供。
その背景にあったのは「知的好奇心」かもしれません。
新しいことへの興味が旺盛な性格は、今でも変わらない部分です。
観光スクールに通っていた当時のカルロスは、「自分にとって高校の知識では足りない。もっともっと勉強がしたい」とハイスクールを2年でショートカットして、大学に行くことを考えていました。

片道キップ

グアテマラではハイスクール卒業の年に、全ての学生が「インターンシップ」を行うのが通例です。大学進学を考えていたカルロスも卒業の年に、グアテマラシティにあるグアテマラ観光局のオフィスでインターンシップを経験することになりました。

本心を言えば、観光客の多い古都アンティグアで仕事をしたかった。
そこにいれば、外の世界とつながる「出会い」があるかもしれない。
ただ、インターンシップの枠があったのはシティでの仕事。最初は気持ちも上がらないまま始まったインターンシップでしたが、そこで運命的な出会いを果たすことになります。

グアテマラ観光局のあるビルには、イミグレーション(出入国管理)があり、ある日、そこに日本人の女性が訪れました。
日頃から英会話の機会を求めていたカルロスは、日本人の女性を見かけて声をかけました。それがきっかけとなって、彼女はカルロスの家でホームステイをするまでの仲になったのです。

日本人から聞く外の世界のこと。
世界を旅することの魅力。
海の向こうへの想いが募っていくなか、日本人の彼女はカルロスにとある提案をしました。

「ここまでお世話になったんだから、カルロスも日本に来てみない?チケットは私が手配するから」

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それは、カルロスの人生を大きく変える片道キップになりました。

つづく


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グアテマラの小規模農家生産者団体 Good Coffee Farms の代表であるCarlos Melen(カルロス・メレン)


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