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漁港ノスタルジー

魚釣りが好きだ。

食いついた瞬間、魚とつながるその一瞬。
力強い引きに、竿を握る手に力が入る。

焦らないように、必死に自分を落ち着かせる。
束の間の真剣な駆け引き、網に入れるまで決して気を抜くことはできない。
そして、魚を引き上げた瞬間の喜び、、、何にも変えがたい達成感がそこにはある。

と、言ったものの、正直に言うと、
魚が釣れる瞬間よりも、水面に糸を垂らして、釣れないねぇ…とぼやきながら、じっと待っている時間が結構好きだったりする。

僕は海のない地域、いわゆる海なし県で育った。
今も海を見ると、童心をくすぐられるというか、家族で海に遊びに行ったいつかの夏休みのような、そんな気持ちに自然となる。
だから海釣りに出かけるときは、多くの釣り人が抱えている期待感や希望とは少し違ったワクワクを、そっと懐に携えて車を走らせている(恥ずかしいから誰にも言わないけれど)。

海釣りの朝はとても早く、夜明け周辺の時間に訪れる”朝マズメ”という、魚の活性が上がる時間を狙っていく人も多いため、深夜に出発することもよくある。
場所取りのために、ポイントについた頃はまだまだ夜の盛り。
そんなときに、いつも僕を魅了し、また不安にさせるのが漁港である。

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夜の漁港は、不思議な魔力を放っている。
夜の海が発する吸い込まれそうな暗闇に浮かぶ漁港は、さながら廃墟のよう。日が昇れば海へ繰り出す船も、夜のそれは、打ち捨てられ不気味に浮かぶ廃船のようだ。

ポツリポツリと光る電灯。
真っ暗闇に浮かぶ自動販売機。
釣り人の餌を求めて漂う猫。
どれもこの世界のものではいように見えてしまう。

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そんな漁港で、朝を待つ。
釣果という希望を胸に、漁港が醸し出す不安に苛まれながら。

自由に釣りができる日々は、いつ戻ってくるのかな。

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