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シティ・オブ・ゴッド/映画(ドラマ・アクション・バイオレンス)/監督:フェルナンド・メイレレス

 ブラジル、リオデジャネイロのスラム街、シティ・オブ・ゴッドで繰り広げられるギャングの抗争と、その中に生きる若者たちの危険な青春を描くブラジル映画。

 カメラマンを目指す青年ブスカペは、シティ・オブ・ゴッドを治めるギャングのボス、リトル・ゼの写真を撮りに向かう途中、武装したギャングと銃を構える警官隊のにらみ合いのど真ん中に取り残されてしまう。絶体絶命のピンチの中、まだブスカペが少年だった時代から、この瞬間に至るまでのシティ・オブ・ゴッドの物語が語られる…。

 シティ・オブ・ゴッドの生活は常に危険と隣り合わせだ。日常に盗みや暴力があふれ、近所の家にはかくまわれた犯罪者が潜む。それでも、その生活はどこか牧歌的で底抜けの明るさがある。

 この映画の魅力の一つがテンポの良さだ。軽妙なブラジル音楽に乗せて、ギャングたちは盗み脅し小競り合い、シティ・オブ・ゴッドの歴史を積み重ねる。物語の主人公は次々に入れ替わる。誰かの物語の中では脇役だったキャラクターが、次は主役となり、また別の物語を紡ぎだしていく。時には、ただのバスの車掌だった人物が、運命のいたずらでギャングに銃を向ける。この街では、一瞬先がどうなるかは誰もわからないし、物語は予測のつかない方向へと転がっていく。

 映画の中では、60年代末から70年代末まで時代が流れるが、支配するギャングが入れ替わるだけでシティ・オブ・ゴッドの銃声は鳴りやまない。スラムでは少年たちも銃を握り、銃を握った少年はやがて大人となり街を支配する。ますます泥沼化する争いに堅気も巻き込まれ、抗争は次第に激化していき、明るかった街は凄惨な地獄と化していく。

 スラムの抗争とカーニバルのような日常、それはあまりにも典型的なブラジル像だが、それを超えるリアルさと突き抜けたポップさにしびれ、ブラジルという国への興味が広がるだろう。

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この記事は以下の特集の一部です。
【Good Vibration Magazine 】⇒   特集:遠い世界へ

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