パタゴニア /書籍(紀行文)/著者:ブルース・チャトウィン
吹きっさらしの大地に素性のしれない流れ者たちが住みつく不毛の土地、南アメリカの南端、コロラド川以南のチリとアルゼンチンにまたがる地域がパタゴニアである。イギリスの作家、ブルース・チャトウィンが1974年から翌年にかけてこの地を旅した経験をもとに書いた旅行記が『パタゴニア』である。
チャトウィンは自身の足跡や旅で出会った人々との交流を描くとともに、訪れた土地土地でかつて起きた様々な事件や、そこに連なる歴史を彼の旅路と並列に語る。米国からパタゴニアへ逃れてきた西部開拓時代の無法者たちの末路、大航海時代の探検家に食料にされたペンギンたちによる復讐、かの地の記憶をチャトウィンは硬質な乾いた筆致で語るが、それはどこか眉唾な物語である。パタゴニアからの帰国後、チャトウィンはパリでパタゴニア王を名乗るフランス人に謁見する。果たしてこの中に書かれていることはどこまで本当だろうか。
チャトウィンはその後も、ネパールの山奥からクーデターに揺れるアフリカの国まで世界中を旅した。その旅の果てに夭折する直前、最後に出版された短編集『どうして僕はこんなところに』でも、果たして本当か嘘かわからない彼の語りはやむことはないが、そこに描かれる世界は不思議に富み、その世界を見つめる彼の目線はどこまでも透徹している。
パタゴニア(河出書房新社)
どうして僕はこんなところに(KADOKAWA)
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