マカシェイラ・フィールズ /音楽アルバム/アーティスト:アレッシャンドリ・アンドレス
優れたメロディーメイカーとはどんな人か。これだけ音楽に溢れた世の中で、今まで聴いたことがなく、それでいて自然に口ずさみたくなるメロディーを生み出せる人こそ、そう呼ぶにふさわしいのではないだろうか。ならば、ブラジルの音楽家、アレッシャンドリ・アンドレス(Alexandre Andrés)は、優れたメロディメイカーといえる。それは、彼が全曲作曲した音楽アルバム『マカシェイラ・フィールズ(Macaxeira Fields)』を聴くとわかってもらえるだろう。
例えば、表題曲の3.Macaxeira Fieldsは童謡のような耳なじみの良さがあるが、口ずさんでみると、そのメロディーは複雑なリズムとハーモニーを持っている。『マカシェイラ・フィールズ』にはそんなシンプルなようで奥深い、磨き抜かれた宝石のようなメロディーを持つ曲が詰まっている。さらに、そのメロディーを素晴らしい編曲が引き立てている。ボーカルのバックで演奏される、ギター、コーラス、アコーディオン、クラリネットなど、腕利きの演奏者たちによるアンサンブルだけでも聴き飽きない。
『マカシェイラ・フィールズ』は、至高のメロディー、編曲、演奏で作り上げられた奇跡のような作品だが、ブラジルのミナスジェライスという土地だからこそ生まれた作品でもある。ミナスジェライスはブラジル南東部の州で、18世紀頃から金鉱の開発で発展した。今でもその富を背景に培われたクラシックや教会音楽の伝統が生きており、当地の音楽にはブラジル音楽の中でも独特の、浮遊感を感じるハーモニー感覚がある。アレッシャンドリはミナスジェライス州の出身で、彼の音楽にもミナスジェライスの伝統の影響を感じる(この浮遊感と繊細さが好みにはまったなら、同じく当地の音楽家、Lô Borgesの『A Via Láctea』をオススメする)。
また、『マカシェイラ・フィールズ』には、ミナスジェライス出身者以外にも、現代のブラジルからアルゼンチンまで超一流の音楽家が参加している。もし気になる歌声や演奏があれば、このアルバムから現代南米音楽の遥かな広野を探求する道しるべにもなるだろう。
『マカシェイラ・フィールズ』CD 日本公式サイト
Sound Cloud(Alexandre Andrés )
『A Via Láctea』Amazon(CD)
「Clube Da Esquina Nº2」 Spotify
この記事は以下の特集の一部です。
【Good Vibration Magazine 】⇒ 特集:遠い世界へ