薫氏

源氏物語、現在「浮舟」の途中まで読んでおります。
薫氏よ。薫氏へのモヤモヤが止まりません。
だってさ、この人一番エロくない?
説明すると、光源氏が死んでからのお話は、主にこの薫と匂宮の二人を主人公として展開していくのですが、匂宮がどっちかというと光源氏のプレイボーイというかきらきらした部分を受け継いだ方で、薫は光源氏の思慮深くて仏道に心を傾ける部分の方なわけです。(端的に言うと明と暗的な?)
この暗の部分がさー、暗というだけあってひねくれてるっていうか、ああ明暗兼ね備えての光源氏、さすが主人公は光源氏だったんだなと妙に私に納得させるいじけ具合。
平安時代と今の性の感覚は違うからさ、今では絶対アウトだけど、当時は「姿を見る→契る」までちゃんとやらないと女の人が幸せになれない時代だったのね、とつくづく思わせる。
なんで薫がエロいのかっていうとさ、
「実際の情事さえしなきゃOK」
→「姫君の姿を見て添い寝するまでは大丈夫、それで自分は姫君の意思を尊重している、自分はすごく真面目だ(と思い込む)」
→「実際は姿を見られたことにより姫君の誇りを打ち砕いている。かといって契りは結んでないから、相手のものにもなれず、もし相手のものになったとしても悲観的な将来しか描けず姫君(大君)は間接的に自殺する」
(大君が悲観的になったのは匂宮と妹の中君の様子を見てというのもあるけど。)

これさ、すごいさ、モノ扱いだよね。
責任とらないんだもの。
いや、物理的な面倒は見てるよ。大君に対しても中君に対しても。
相手の心情を尊重して、っていうのもわかるよ。大事な心構えだよ。
でもさ。じゃあ初めから顔見るなや。添い寝するなや。って話ですわ。
当時の姫からすれば、顔見られた時点でもう純潔を破られてるんだから、アウトなんだから、とどめさせや。顔見たいだけ見て、あとは情事してないんだからいいよね?って、ある意味すごく姫側の心情を無視した、姫をモノ扱いした態度だよね。ひどくない? 情事してないからいいって。姫側の気持ちを推し量るなら初めから御簾だの屏風だのを押し開けるなや。中途半端である意味自分の欲求にすごく忠実なんだよ。盗撮する人みたい。言葉悪いけど。
言いづらいことだけど、女の人の側としても「私はこの人に属するか、属さないか」っていう気持ちの仕切りがあると思っていて、契ることによって「この人に属するのだ」という一種の覚悟が決まると思うんですよね。それを薫はさせてくれない。覚悟を決めさせてくれない。それがよくないと思う。
まあ令和に「この人に属するか、属さないか」とかいう話をしている私はかなり時代遅れかもしれませんが。少なくとも私にはその感覚がある。
こんなだから浮舟とか、大君に見た目の似た形代が欲しいって発想になっちゃうんだよ。
その見た目さえ一緒ならいいとかいう発想がエロいよ。
そして形代の愛というのは、桐壺→藤壺→紫の上という源氏にもあった性癖で。まさしく暗の部分を受け継いでいる薫氏です。
匂宮はわかりやすくクズだからまだ好感がもてると思ってしまう私はちょっと変なんだろうか。浮舟が匂宮の方に惹かれちゃう理由、ちょっとわかる。単によりイケメンってこともあるけど、なんとなく責任とってくれそうだもの。精神的な「私はこの人に属している」っていう責任を。たとえそれで悲しい目に遭っても、匂宮はわかりやすく好色でイケメンだから仕方ないって思えるというか、はっきり「失敗した」とわからせてくれるという時点で。
まあ光源氏は偉大だってことですね、二つに分けるとろくなことないですね、と思わせる宇治十帖になっております。
薫からいい匂いがするのは、シンプルに一番エロいからでは?とか思い始める私です。
と、最後まで読んでから感想書こうと思っていたのですが、薫氏がじれったくなりすぎて書いてしまいました。以上。




いいなと思ったら応援しよう!