新しいもの好き
「エリカさん、これはあなたのひいおばあさまの代から受け継がれてきた宝石よ。大事にしてくださいね」
とか、できないタイプだ、あたしー。と思った話です。
危なかった。先日記事に書いたラピスラズリのブレスレットを一瞬売ろうかな、とか考えかけた。ブランドものの時計が欲しいと言う理由で。その時計は私に似合わなくて、ブレスレットの方が私にはるかに似合っていてきれいであるにも関わらず、だ。ブレスレットを左腕につけたとき、はっきりの抗議の声が聞こえた。「私を売るんですか? 今まで3年間あなたのそばにいて、あなたを守ってきた私を見捨てるつもりですか?」実際つけている左腕がしびれた。危なかった。ほんとに。もう少しで色々なことを売り渡すところだった。
これとはまた別の話として、私はほんとうに飽きっぽい。流行にはあまり興味がないが、新しくうちに来たものは一瞬すごくちやほやして、飽きたらすぐに売ったり捨てたりするようなところがある。ずっと連れ添ってきた奥さんを捨てて新しい女と結婚したバンドマンを見ても「まあ時間の重みがあるからね、負担というか」とか平気で言えちゃうタイプだ。
ああでも、ほんとにこれは思い止まってよかった。たぶん後悔する。時計の値段には遥かに届かない値段で売られてしまう。一度売りかけたその石はもう私を守ってくれないんじゃないかって気もする。仮に売ったとして、たぶんまた同じものが欲しくなる。でもそれは母がくれたそれではない。「髪を坊主にしないように」という願いを込めて作ったそれでは決してない。よかった。ほんとによかった。止めて。ありがとう、夜眠れなくて歯止めききづらい私の理性と衝動と感情。さすがにこれは無理だよね。そうだよね。よかったよお前らがまともでいてくれて。
という、無言の逡巡でした。ああほんとにでも、買った本最後まで読むようにしなきゃ……。
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