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国家試験から学ぶ!臨床検査技師の仕事-脂質の分子構造を学ぼう!の巻-

こんにちは!
臨床検査技師のあきまるです!

国家試験から学ぶ!シリーズ!

今回の問題は
第69回臨床検査技師国家試験問題の35問目
です!

それではLet's Go!


問題

グリセロール骨格構造を含むのはどれか。 2 つ選べ
1.レチノール
2.アラキドン酸
3.トリグリセライド
4.スフィンゴミエリン
5.ホスファチジルエタノールアミン


簡単な解説

そもそもグリセロールとはなんでしょうか?
グリセロールとは別名グリセリンです。
分子式はHOCH2CH(OH)CH2OHです。ごちゃっててちょっと分かりにくいですよね。図で表すと以下の通りです。

グリセロール(コトバンクより)

分子構造は、直線でつながった炭素3個に一個ずつヒドロキシ基(-OH)が付いています。

ではこの構造を持つものはどれでしょうか。
1個だけ似た名前のものがありますが、もう1個答えなければなりません!


解答

正答は

3.トリグリセライド
5.ホスファチジルエタノールアミン

です。

裏解答

グリセロール骨格と選択肢それぞれの成分について深掘りしましょう。

グリセロール骨格の役割

グリセロールは生体内で以下の役割があります。

  • エネルギー貯蔵の基盤
    トリグリセリド(TG)の中心骨格になります。
    TGは脂肪細胞の中でエネルギーを貯蔵する倉庫の役割があります。

  • 細胞膜の素材
    リン脂質(PL)の中心骨格になります。
    PLは細胞膜の脂質二重層の材料です。細胞の外と内を隔てる壁の役割を果たしています。

  • 代謝の助っ人
    グリセロールはエネルギーを生み出す「糖新生」というプロセスで使われます。飢えた体が「エネルギーをくれ!」と叫ぶとき、グリセロールがグルコースに変身してその願いに応えます。

選択肢の成分について

それぞれの分子構造をみてみましょう。

各成分のwikipediaの画像を引用しました

この構造を全て覚えるには苦しいですよね。もちろん私も完全には覚えていません(笑)大体こんな感じかなーというレベルです。

これらの成分を少しヒーローっぽく解説します。

  1. レチノール
    「お肌ピカピカ視力バッチリのビタミンA!」
    構造式:シクロヘキセン環+ポリエン鎖+ヒドロキシ基
    夜の暗がりで「猫目の力」を発揮する原料で、皮膚や粘膜も守るナイトガード。酸化するとレチナールやレチノイン酸に変身する、変化自在な美肌のヒーローです。

  2. アラキドン酸
    「体内の炎の使い手!」
    構造式:20炭素+4つのcis二重結合
    細胞膜に潜む脂肪酸です。刺激を受けるとプロスタグランジンやロイコトリエンに変身。炎症や免疫の司令塔として大忙し。でも暴れすぎると炎症モンスターになるので注意!

  3. トリグリセライド
    「エネルギー界の貯金箱!」
    構造式:グリセロール+3つの脂肪酸(エステル結合)
    脂肪細胞にぎっしり詰まったエネルギーの宝庫。脂肪酸とグリセロールに分解されて燃料となります。食べ過ぎると体に貯金が貯まりすぎて困る、愛すべき子。 

  4. スフィンゴミエリン
    「神経細胞のボディガード!」
    構造式:スフィンゴシン+脂肪酸+リン酸基+コリン
    脳と神経を守るミエリン鞘のVIP。神経信号をスムーズに伝える神経系の特急です。語源はスフィンクス!謎めいた構造からつけられたようです。

  5. ホスファチジルエタノールアミン
    「細胞の膜職人!」
    構造式:グリセロール+脂肪酸2個+リン酸エタノールアミン
    細胞膜を2本の足(脂肪酸)でしなやかに保ちます。エタノールアミンは頭で、グリセロールは背骨と覚えましょう!見えないけど、細胞内のコミュニケーションを支える縁の下の力持ちです。


余談

私は普段生化学検査を担当していますが、特にこの脂質に関しては本当に苦手です。酵素や基質の知識はすっと頭に入ってくるのですが、なかなかどうして難しいものです。

お腹には脂質がすっと入ってくるのですが。どうしたもんでしょうか。

臨床検査技師として検査データを見るにあたって、R-CPC(Reversed Clinico-Pathological Conference)という教育を受けました。簡単に言うと、検査値と年齢・性別・極簡単な症状のみを頼りに患者の病態を考えるものです。

ではこのR-CPCを進めるにあたって、何から始めれば良いのか・・・。
信州大学が実施している方法を参考にしましょう。

臨床検査学教育 Vol.8, No.1 p.30~36, 2016

どうでしょうか。
初めて見ると何やら難しくみえそうですが、実際にやってみると面白いですよ!酵素や基質項目を中心にデータを見られるようになります。私もR-CPCを進める時はこれを参考にしています・・・が、ここに脂質項目は総コレステロールしかないんですよね。それが脂質苦手の所以かもしれません。

とはいえ血液検査データのイロハを学ぶにはR-CPCは非常に参考になります。参考書籍を紹介するので、気になる方は是非お手に取ってみてください。各項目の見方と39症例を実際に考えることができます。


というわけで今回はここまで。
最後までご覧下さりありがとうございました!

また次の記事でお会いしましょう!
臨床検査技師のあきまるでしたノシ

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