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負けイン論-オタク講義-
本稿では『負けヒロインが多すぎる!』の魅力について語っていきたいと思います。
先日放送されたアニメ絶大な人気を誇り、原作ラノベが飛ぶように売れています。具体的にいえば、2024年8月時点で、原作小説の電子版の売り上げが6月比で25倍以上増加し、ガガガ文庫の電子書籍として月間売上最高を記録しました。
そんな本作の魅力を主観ガンガンで語っていきます!
0.負けインとは
『負けヒロインが多すぎる!』(まけヒロインがおおすぎる、英題:TOO MANY LOSING HEROINES)は、雨森たきびによる日本のライトノベル。イラストはいみぎむるが担当している。ガガガ文庫(小学館)にて2021年7月から刊行されている。略称は「マケイン」
(引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%A0%E3%81%91%E3%83%92%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%8C%E5%A4%9A%E3%81%99%E3%81%8E%E3%82%8B!)
あらすじとしては、主人公温水と、フラれたヒロインたち、所謂”負けヒロイン”たちによる青春ラブコメである…
1.なぜ負けインなのか?
この問いは、なぜこの略称になったのかということではありません。
なぜ、負けインを取り上げたのか?その魅力はなんなのか?ということを問うているのであります。
1.1 ラブコメの分類
青春ラブコメ及びラブストーリーには大きく分けて三種類あると考えています。
一つ目は「少女漫画型」
こちらはコメディ要素のあまりないラブストーリーと呼称される作品も多いのですが、基本的構造として、「相手→自分かつ自分→相手」の双方向的な心の歩み寄りを「語り」で描く作品が多いように思われます。
心理的描写が豊富で、共感性の高い作品も多い印象です。
二つ目は「少年漫画型」
こちらは自分が一番慣れ親しんできたものです。少年誌(主にジャンプなど)においてよく展開される形態で、「自分←相手」の歩み寄りが「行動」によって描かれます。
また、少女漫画型との違いとして、奇抜な舞台設定や、お色気シーンの多さも特徴です。それに反比例して、心理的描写は少なめな傾向です。
三つ目が「ラノベ型」
こちらはあまり思い浮かばない方も多いとは思いますが、「トラどら」や「俺ガイル」など知っている方であれば想像はつきやすいかと思います。
そして「負けイン」もここに属すると考えています。このラノベ型について、他の型の補足も交えて深く語っていきます…
1.2 ラノベ型
ラノベ型とは「少女漫画型」と「少年漫画型」のハイブリットであり、さらに文字媒体であることの強みである「語り」を生かした作品であると考えています。
基本的に問題を抱えた男女が出会い、相互的な歩み寄りによってヒロインまたは主人公の内在した問題を解決していくという流れなのですが、奇抜な舞台設定はなく、通常の学園生活(部活動、林間学校、文化祭など)における人間関係の変容を描いています。
これらは、通常の学園生活を巧みな主人公の「語り」で壮大な人生哲学の物語に発展させていく作品が多いように思います。
身体的な行動よりも、語りや会話劇によって物語が進行していく様はさながら、「新世紀エヴァンゲリオン」や平成中期のノベルゲームの様相を呈しています。
ラノベ型はそれらを表す用語であるところの「セカイ系」を用いて「学園セカイ系」とも言えるかもしれません。いや、言えないか…
1.3 人は鏡である
私の好きなノベルゲームの一つに『ヘンタイプリズン』という作品があります。
ネタバレになってしまうのですが(抽象度を上げて語ります!)主人公がどのヒロインかに絞らないまま進むルートがあり、いわゆるハーレムルートでウハウハと思われるかもしれないですが、本作ではとんでもない展開が待ち受けています。
ここから学ぶに、人(ヒロイン)と深く関わり合い、また愛し合う過程というのは他人という鏡を用いて自らを見つめ直す過程だと思うのです。つまり、自らの内在的な問題を直視するにはこの関わり合いが必要ということです。
それをしなかった主人公は壮絶な過程の末に自分で自分と向き合わざるを得ませんでした。
そういうわけでラブコメ、ひいてはラブストーリーはこの、「関わりあうことで起きる内在的な問題の解決」が肝だと思うのです。
直近の作品だと「僕ヤバ」とかがめちゃくちゃ素晴らしかったと思うんですけど、それは今度の「僕ヤバ論」で語ります。
負けインにおいてもそれは見られます。ヒロインは「負けた」状態からスタートするのですが、当然想いというのは簡単に打ち切れるものではありません。三者三様、様々な失恋との向き合い方があり、かかる時間も人それぞれです。
それに対し、主人公は何か奇抜な、ある種一発逆転的な策を打つでもなく(7巻除く)、ひたすらに寄り添い立ち直る手助けをしてくれます。
また、主人公は初期段階では青春に対して穿った見方をしていますが、本質は優しく、内省のできる性格なのも好きなところです。ヒロインを通じた主人公の変容がある作品はとても見応えがあります。
1.4 負けて始まる
Life goes on(人生は続いていく)という言葉がありますが、まさにこの作品にぴったりです。
ラブコメではラブコメではフったフラれたは基本的には終幕付近のイベントであり、その後はエピローグでしか語られません。ですが、彼らの世界ではその後も生活は続いていきます。いくら劇的な恋愛劇があったといえ、本作冒頭で語られていることではありますが、高校生のイチ恋愛であり、人生はその後に膨大に広がっています。つまり、負けていようが、人生という物語においてはまだ近似してスタートライン上にいると考えることもできるわけです。本作品ではそこに主眼が置かれており、メタ的に裏側を覗き見ていると考えることもできます。
1.5 なぜ負けインなのか?
序盤サブタイを後半で回収するのが好きなんです。閑話休題、魅力は語りましたが、結局なぜこの作品を語るのか?です。軽いまとめ的にはなりますが、まずラブコメに関して一度解体して語ってみたいというのがありました。
また、ラノベ型において負けヒロインというメタ的な奇抜さを用いた本作はとても魅力的で、格好の題材になりうると考えたからです。
次項からはがっつり本編について語っていきます!
2.大好きな箇所
2.1「久しぶりだね」
これは八奈見と温水が衝突後、部室で再開した時の八奈見の第一声です。アニメ勢は?と思うフレーズかもしれませんが、無理はありません。原作、漫画版にはあるのですが、アニメではカットされています。(おそらく演出の都合上、アニメ版の扉で鉢合わせするシーンとはそぐわないフレーズのため)アニメ勢だった私ですが、オーディブルで聞いていた際、このセリフを聞いて血液が沸騰しました。(炎の流法)
温水と八奈見は数週間前まで会話すらしない関係だったはずです。しかし弁当オプションはじめ、イベントを重ねるうちに、1日弱会話していないだけで「久しぶり」と思うようになってしまったのです。温水視点ではそのことは明記されていましたが、八奈見の思いをその一言で表現するとは。脱帽です。
2.2 可哀想ヒロイン 小鞠知花
本作のヒロインの一人である、小鞠知花。小柄でオタク、モサモサした髪とオドオドした言動が特徴のヒロインです。こういうヒロインが私は大好物なのです。「ヘンタイプリズン」千咲都、「生徒会にも穴はある!」陸奥こまろなど全体的に可哀想な境遇にある子は応援したくなります。
そういう子が意を決して本心を話すシーンや独白するシーンが本当に…。
あと個人的に好きなところが、温水と八奈見が衝突後に、旧校舎の階段に温水に会いに来てくれたところです。ああいうシチュエーションのときは誰かが一緒にいてくれるってだけでも救いになるよなあ…。
2.3 キャラソン過剰考察
本作はキャラソンが豊富なのが魅力の一つです。しかも懐メロのカバーっていうのがたまりません。メインヒロインは一人一人二曲ずつあるのですが、そのうち一曲がEDとして使われています。ED曲にならなかった方について語っていきます。
八奈見杏奈は「リルラリルハ」
聞いてそうすぎる。木村カエラっていう絶妙なチョイス、オシャレ感もあり、可愛くもある、陽キャ女子八奈見杏奈にぴったりすぎる。
焼塩檸檬は「BREEEEZE GIRL」
焼塩はベボベ聞かないって?そういう意見もあるかもしれません。まあ私もそう思います。ただ、綾野は聞いてそうだな?あとはわかると思います。
小鞠知花は「明日も」
焼塩以上に、小鞠はSHISHAMO聞かなそうだし、そもそも音楽とか聞かなそうです。最初はそう思ってました。ただ考えてみてください。小鞠が音楽の情報を手に入れるとしたら、おそらく一緒に運動している焼塩。彼女ならこの曲を聞いていそうです。問題はここからです。
走るためのモチベーションや、綾野への想いなどをなんとなく重ねて聞いている焼塩に対し、勧められて渋々聞いてみるも、焼塩とは別角度で歌詞がブッ刺さってしまい「い、いい曲だな…これ」って本心から言ってしまう彼女の姿が想像できませんか!!
こんな無限の想像ができてしまう曲選、素晴らしすぎる…
2.4 温水佳樹
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本当に可愛い。本当に。
3.まとめ、というか今回のオチ
なんかやたら語ってしまいました。。。今後も負けインについて語りたいことがあれば、新しく記事にして投稿します。
途中負けインというかラブコメ論になってしまったのは申し訳ありません。
語りたいテーマは他にもたくさんあるのでぼちぼちやっていきます!