宝島事件の動機等を考えてみた(2024.05.22)
確たる根拠がない状態ではあるが,報道やYouTubeによる情報をもとに,この事件の動機等を考えてみた。
その1 宝島夫婦と長女夫婦の衝突
事件前の1月には長女がサンエイグループ等数社の経営権をはく奪されている。
長女の経営権をはく奪する目的は、「長女とその内縁の夫である関根容疑者をサンエイ等の経営から外す動き」と考えて良いだろう。
宝島夫婦は,関根容疑者のことを良く思っていなかったと思われ,長女との結婚も認めていなかった可能性がある。
2月には関根容疑者が、宝島夫婦経営の店舗で外国人の違法就労が行われていると上野警察署へ通報している。
結局,違法性はないという結論になったものの、こういう点からも,宝島夫婦と長女夫婦のトラブルは、かなり紛糾していたと予測される。
関根容疑者は,「5月連休明けには同社を退職する」と友人に話しているというが,これが真実であれば,退職に伴って経済的に大きな打撃を受けることになる。
遺体の損壊状況は,龍太郎氏の顔面に損傷はないものの,幸子氏の顔面はかなりひどく損傷している状態といわれる。
ただ,殺害目的だけであれば,顔面を激しく損傷する必要はない。
また,顔面を激しく損傷して身元の特定を遅らせる目的であれば,龍太郎氏の顔面も激しく損傷しているはずである。
こうした顔面の損傷状況から判断すると,実行行為者は幸子氏に対して激しい恨みを抱いていたと推認される。
長女夫婦は、まるでパシリ同然に扱われ、汚れ仕事もさせられていたはずで、居酒屋の経営から排除されたことを恨んで,激しい感情的な対立が生じていたと予想する。
こうした場合,事後,端的な形で表れてくるのが相続問題である。
宝島夫婦は長女に経営権の問題だけでなく、宝島夫婦の財産をなるべく長女に相続させないつもりであったと予測する。
その2 家族構成と相続関係
宝島龍太郎氏、宝島幸子氏には娘が2名いる。
長女は幸子氏の連れ子で龍太郎氏とは直接の血縁関係はなく,次女は龍太郎氏と幸子氏の実の子供である。
長女と関根容疑者は内縁関係で、関根容疑者には長女に対する相続権はない。
まとめると,相続関係は、龍太郎氏の財産の相続人は幸子氏と次女が相続人で、長女と関根容疑者には相続権はない。(※長女と龍太郎氏が養子縁組をしている場合は長女にも相続権は発生する)
その法定相続割合は、幸子氏が1/2、次女が1/2となる。
幸子氏の財産の相続人は、龍太郎氏と長女・次女の3名である。
法定相続割合は、龍太郎氏1/2、長女1/4、次女1/4となる。
龍太郎氏死亡後に、幸子氏が死亡した場合は、幸子氏の財産を長女1/2、次女1/2の割合で相続することになる。
ちなみに、長女が死亡した場合は、関根容疑者は長女とは内縁関係であるため、長女の娘が長女の財産の全額を相続することになり、関根容疑者は長女の娘の財産に対する相続権もない。
例えば、龍太郎氏が死亡した場合に、「龍太郎氏の財産は全額次女が相続する」と遺言し、幸子氏に異存がなければ,次女が龍太郎氏の全財産を相続することになって、幸子氏も長女も龍太郎氏の財産を相続することはできない。
また、幸子氏が死亡した場合、「幸子氏の財産は全額次女に相続させる」と遺言すれば、長女は,最悪,遺留分を求めて訴訟提起しなければ幸子氏の財産を相続することはできない。
たとえ訴訟を提起して遺留分が認められたとしても、長女が得られる財産は良くて法定相続分の半分程度となる。
幸子氏が,「自分の遺産は全額次女に相続させる」と遺言した場合,長女は,龍太郎氏が生存していれば、幸子氏の財産の1/8程度しか相続できないし、龍太郎氏が先に死亡している場合は,幸子氏の財産の1/4程度しか相続できないことになる。
宝島夫婦と長女夫婦に激しい感情的なトラブルが発生している場合は,こうした相続問題も同時に発生しやすいと言えるのである。
その3 宝島夫妻同時死亡の場合
今回の事件で宝島夫婦は同時に死亡した。
この場合,民法上の同時死亡の原則が適用されて、死亡者間の相続は行われない。
そうすると、龍太郎氏の財産はそのまま次女が全額相続することになるが、幸子氏の財産は、次女が1/2、長女も1/2を相続することになる。
長女が最も有利に相続するケースは、この宝島夫婦が同時死亡した場合だということになる。
宝島夫婦はまだ50代であったから,直ちに遺言が作成されるとは思われないが,幸子氏が遺言を残す(公正証書・法務局登記等を含む)前に、決着をつける必要があったことは事実である。
つまり、長女にとって最も有利な相続を行うためには,宝島夫婦が同時に殺害されること、または宝島夫婦が一緒に失踪することである。
失踪の場合は、失踪した日から7年間経過しないと死亡したものとみなされない。
そうすると7年間相続は開始されないことになり,長女は,その間,宝島夫婦の財産を処分・移動することはできない。
ここに,宝島夫妻の預貯金や動産・不動産だけでなく,店舗の経営権も相続財産にあたる。
つまり,宝島夫妻が失踪した場合,失踪から7年間は店舗の経営権は宝島夫妻と次女が保有することになり変化はない。
しかし,次女はアメリカ在住のため,居酒屋経営を現実的に取り仕切るのは,長女夫婦になるであろう。
長女夫婦は,少しずつ経営の実権を掌握すればよい。
このように失踪の場合は時間的な余裕はあるが,急いで現金化することは困難と思われる。
何らかの理由により,多額の現金が必要となっていたのであれば,速やかに宝島夫婦2名とも死亡が確認されることが必要になる。
つまり、宝島夫婦の遺体が早期に発見される必要があるわけで、この場合は,遺体処理は、あくまで素人並みの稚拙なものでよい。
宝島夫婦の死亡が確認されれば,店舗の経営権を含んで宝島夫婦の資産は,長女と次女が相続することになる。
結論として,宝島夫婦の同時死亡により,長女は,いったん喪失した経営権を相続により再取得することができたのである。
その4 殺害のための構図(想像)
関根容疑者は、最初は宝島夫婦の殺害をプロに委ねようとしたという。
しかし、その死遺体処理についてリスクが伴うことと,その代償としての報酬が少なすぎたこと等を考えたためか、殺害依頼を受けたプロは依頼を拒否した。
しかたなく死体処理だけを依頼しようとしていた者らに、殺害を指示せざるを得なかったのではないか。
佐々木容疑者以下の関係者は、当初、あくまでも「遺体処理だけしか依頼されていない」として、「殺害を行った者は知らない」という構図をつらぬくつもりだった。
佐々木容疑者の指示により警察に出頭した平山容疑者は,「死体処理の指示をした者を明かすと、自分の生命を狙われかねないため、名前は言えない」と言い張ればよい。
しかし,実際には,予定に反して遺体が早期に見つかってしまった。
そして、監視カメラ映像等でその目論見が破綻した。
宝島夫婦死亡が明らかとなった頃から、あまり日も経過していない段階で、14店舗が売りに出されたという情報がある。
これだけ早期に14店舗という多数店舗の評価をして売値を決めるには、事前に店舗の売買に関するある程度の予備資料でも持っていないと簡単に金額を決めることはできない。
全店舗黒字状態らしいが,それなりの準備も必要なのである。
そうすると宝島夫婦とも交流のあった前田容疑者と関根容疑者以外にこれをやれる人間はいないと思われる。
14店舗の売却依頼者は、逮捕者6名以外の者であったとの情報があるが、この点の真相は不明。
また、関根容疑者には相続権・経営権がないので、店の従業員という立場にしかなれない。
まして,店舗を転貸借形式で契約するだけの法律的な権限もない。
同時死亡または失踪後7年経過した場合,最終的に店舗を譲渡する権限を有するのは、長女と次女だけということになるが,この構図を計画するには、不動産売買関係の知識と予備資料だけでなく、相続関係の知識もある程度必要になる。
前田容疑者は,職業柄,相続物件の売買も手掛けていたと思われ,関根容疑者と共に宝島夫婦所有の物件に関する情報も理解していたことを考えると,本件の構図を描ける人物は,関根容疑者と前田容疑者しか存在しないと思われる。
しかし、前田容疑者は、宝島夫婦を選ぶか,長女夫婦を選ぶか選択を迫られることになる。
宝島夫婦を選択すると,事情を知った前田容疑者には身の危険が及ぶことになりかねない。
しかし,これがうまくいくと、長女夫婦の専属不動産業者という地位を得ることができる。
前田容疑者は,行きつけの居酒屋で「日本には年間8万人の行方不明者がいる」「その中には拉致監禁されて殺されているけど、バレていないのがいる」「バレない拉致監禁のコツを教えてあげようか?」などと話していたという情報が確認されている。
長女が最初から加担していたか,事後説明を受けて同調したかは,明確ではない。
ただし,宝島夫婦と相当激しく対立していた可能性が高いため,長女も最初からこの計画に加担していた可能性もあると予想する。
その5 結論(推測)
殺害の動機は,宝島幸子氏に対する怨恨に加え,一旦喪失した経営権を相続により再取得し,グループの実質的な経営権を掌握するだけでなく,できるだけ有利な形で宝島夫婦の遺産を獲得することにあったと予想する。
以 上