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オトジェニック・ソウル・フラワー・ユニオン「満月の夕(ゆうべ)」

今日(2025年1月17日)は、阪神淡路大震災から30年が経った日。

2011年3月11日の東日本大震災から10日後の深夜ラジオの生放送のエンディングで、伊集院光さんが語りはじめた話があまりに印象的で、その当時、つい文字に起こしをしてしまった。独特の語り口は再現できないが、ふだんは面白くてくだらない番組を追求していた伊集院さんにとって、ふだん通りのおふざけもできないし、かといってまじめな話に終始することもできない。そのギリギリの線をねらって喋る伊集院さんは、やはり天才である。

「若手の芸人に聞いた話なんだけど。
アニマル浜口さんが「気合いだ!気合いだ!」っていうのと「わっはっはっは、わっはっはっは」ってやるじゃん。あれを見るたびに、そいつが、「わっはっは星人を思い出す」って言うんだよね。…こんなこと(東日本大震災)がある前ね。「わっはっは星人」ていうのがいて…。
それがまたいい話でさ、いい話っていうか、不思議、だけどいい話でさ。
そいつが阪神大震災の時に、家にひびが入ったんで、避難するところに避難してて。その時まだ子供だったそうなんだけど。
その時に、「わっはっは星人」っていうおっさんが来て、まー、基本、役に立たないおじさんらしいんだよ(笑)。大人がいろんな世話をしているところに来て「わっはっは星人だ」っておじさんは言うんだって。
で、おじさんに触ったら「わっはっは」って言わなきゃダメだっていうルールを勝手に作って、鬼ごっこみたいなことしてくるんだって。それで捕まえて、で、捕まると、もうしょうがないからおじさんとかみんなが「わっはっは、わっはっは」って言ってるだけなんだって。
それで、その「わっはっはおじさん」が、ある日突然、「全員をわっはっはにしたらおじさんは次の星に行く」みたいなこと言うんだって。
そしたら、そいつはもう、ガキの中ではちょっと大人だったし、足も速かったから、わっはっは星人に捕まらなかったんだけど、みんなが捕まって「わっはっは」やってるのに自分だけやれないのが、ちょっと寂しくなってきて、夜、わっはっはおじさんのところにバッタリ会ったふりして捕まっちゃったら「わっはっは仲間」になれるかな、と思って行ってみたら……、

おじさん泣いてたんだって。ひとりで。

もうそれがなんか、すごいいい話でさ。
で、オレはたぶん、「わっはっは星人」になりたい。なりたいな、ってちょっと思ったりとか。
あと、いま、そういうところにいてさ、あんまりやることなかったらさ、そういう役目も、あるんじゃないかってちょっと思ったりするね。

あと、「がんばれ」っていうのが普通か知んないけど、がんばってるよ、たぶん。
たぶん、みんながんばってるっていうか、もう、そこで、ただ息をしていることでも、もうがんばってるっていう意識を持ったほうがいい。
みんながこれ以上「がんばれ」って言ったところでがんばりようなんて誰もわからないのに、つい、僕らはリズムで「がんばれ」って言っちゃいがちなんだよね。失礼のない言葉だと思って。
で、その気持もわかってほしいんだ。その短い言葉で「自分たちはあなたたちの味方です」って言うために、「がんばって」っていうのでしめちゃうけど、自分たちはたぶんがんばっていると思うので…、
とりあえず、今日をやり過ごしてみませんか。
いろいろ失礼ありましたけれども、
本当に……
いい明日が来るように」

そしてこの放送回にかかっていた曲のひとつが、ソウル・フラワー・ユニオンの「満月の夕(ゆうべ)」だった。私はそのときに初めてソウル・フラワー・ユニオンの存在を知った。
30年目の今日もこの歌は歌われただろう。歌い継がれていってほしい。

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