オトジェニック·キム·グァンソク「宛のない手紙」
1964年生まれのキム・グァンソクは、フォークソング歌手として同世代の若者のカリスマ的存在だったが、1996年、31歳の若さで自ら命を絶って、この世を去る。
彼の遺作が「宛のない手紙」という歌である。この歌は、映画「JSA」のエンディング曲として使われた。
私はこの曲が大好きで、ことあるごとに何度も何度も聞いている。
2011年の東日本大震災。津波の被害に遭った町に佇んだとき、なぜかこの曲が頭の中を流れた。以下、拙訳の歌詞を掲げる。
「宛のない手紙」
草の葉は倒れても空を見上げ
花咲くことはたやすくても 美しくあることはむずかしい。
時代の夜明けの道をひとりで歩いていたら
愛と死の自由に出会い
凍てついた川、風の中に 墓もなく
激しい吹雪の中に 歌もない
花びらのように流れ流れ
君よさらば
君の涙はいま 川の流れとなり
君の愛はいま 歌になる
山をくちばしに取って飛ぶ
涙の小さな鳥よ
後ろをふり返らずに
君よさらば