読書メモ・斎藤明美『高峰秀子の引き出し』(マガジンハウス、2015年)
前回に続き、高峰秀子について書く。これもまた9年前(2015年)に読んだ本である。どうやら当時、私の中で高峰秀子ブームが来ていたらしい。これもまた、そのときに書いた読書メモを引っ張り出した。
斎藤明美『高峰秀子の引き出し』(マガジンハウス、2015年)を読むと、女優・高峰秀子が、いかに自分をしっかりと律していて、完璧主義だったかがよくわかる。
とりわけ印象的だったのは、手紙に関するエピソードである。
「簡潔だった。
心に染みた。
それが、高峰秀子の手紙だった」
「そして高峰が便りを出すときの最大の特徴は、自分からは出さなかったことにある。どうしても必要に迫られた重大な用件がある時のみ、例外的に出した。
年賀状も一切出さなかった。
黙って人を想う人だった。
手紙を読むのには時間がかかる。
(中略)
人の時間を奪うことは罪悪である。
これが高峰の信条だった。
その代わり、返事は早かった。
読んですぐ出した。いつも」
当時書いた読書メモを久しぶりに読んで、私は急に恐くなった。
最近は手紙をほとんど書かなくなったので、もっぱらメールやメッセージアプリということになるが、たとえば気を許した友人などに対して自分から書くメールは、簡潔でも心に染みるものでもなく、むしろクドい文章なのである。
ひょっとしたら、相手の時間を奪っているのではないか?
「人の時間を奪うことは罪悪である」
という言葉が心に突き刺さる。
ただただ私は、高峰秀子の境地に達したいと思うばかりである。
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