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手塚治虫「紙の砦」(1974年)
手塚治虫の短編漫画「紙の砦」。
自らの戦争中の体験をもとに描いたフィクションだが、自伝的漫画ともいえる。
まず、タイトルがすばらしい。
「紙」とはすなわち、漫画を書く紙である。
漫画を書くことが好きな主人公は、戦争中、厳しく禁じられていた漫画を、こっそり書くことで、生きる希望を見つけていた。漫画こそが、自らを守る砦だったのである。
主人公は、オペラ歌手をめざしている宝塚歌劇団の女性と知り合う。
2人はお互いの夢を語り合うが、やがてその夢が、戦争によって引き裂かれる。
主人公は、終戦とともに「漫画を書く自由」を取り戻すが、女性は、オペラ歌手として舞台に立つ夢を絶たれてしまう。
墜落した飛行機に乗っていた米兵を、主人公が叩きのめそうとして思いとどまる場面は、とりわけ印象的である。
憎い敵の死体を叩きのめしたところで、何が報われるというのか。すべては、こんな戦争を始めた愚かな人間の仕業なのである。
戦争はなぜ、憎むべきものなのか。
それは、この短い「紙の砦」を読めば、何度でも考えることができる。
もしその日が「平和について考える日」であるのならば、その日にこそ、手塚治虫の「紙の砦」を読むべきである。