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憐みじゃなく愛

以前、一緒に働いた人が退職してしまった。
他部署に配置換えになって体調を崩してしまったらしい。
私が4月に病気になって8ヶ月仕事を休んでいた期間の出来事。
めちゃ性格の良い女性。
今まで出会ってきた中でダントツ1位!
優しくて性格の良い人は病院を辞めていってしまう。
かなり残念だ。
そんな彼女が昨日の日勤、最後の挨拶にやって来た。
バタバタと忙しくしている中、私は彼女を見つけたので、翔り寄った。
もう会えなくなるかもしれないと思ったら、会って話しておきたかったから。
彼女の手を握った。
辞めるなんて残念だ。体調が戻ったら、また一緒に働こうねと伝えた。
彼女はぼろぼろと泣き出してしまった。
師長と主任と私は彼女の手を握って、ぶんぶんと手を振って、その時を噛み締めた。

去る人もいれば、私のように帰ってくる者もいる。
出会いと別れ。
帰ってきたからこそ、彼女が去る場面に立ち会えたのかもしれない。
だから、良かったんだ。きっと。

帰りはロッカーで以前いた部署の元同僚に会った。
本当に久々。
会いたいなと思っていたから、ちょうど良かった。
「本当に久しぶりだね。全然会わなかったね。」と言われたので、8ヶ月仕事を休んでいたことを話した。
私の事は噂にもなってなかったみたいで、病気の事は全然情報として入らなかったみたい。
看護師の伝達能力は凄いはずなんだが、守秘義務が守られたんだな。
凄いな。うちの師長さん。
本当に今の師長さんで良かった。
私はその面ではラッキーだった。
私が話した事で噂になるかもしれないけど、別にいい。
これが私なんだと胸を張って臨める。
彼女は「頑張りすぎないこと。自分の体を大切にすること。免疫力をアップすること。」と言ってくれた。
ありがたい。

私は今回、突然病気になって、8ヶ月の間、友人知人同僚との連絡を完全に断った。
知らせたとしても、相手も対応に困るだろうし、私もちゃんとした精神状態で接する事ができないと思ったからだ。
8ヶ月の間に精神状態を元に戻して、笑って話せるようにまでになっておきたかったからだ。
相手に心配をかけたくなかったから。
相手に以前と同じように接してもらいたかったから。
憐れまれたくなかったから。
気を使わせたくなかったからが一番の理由だと思う。

復帰した時、1人の同僚が泣きながら、「LINEで連絡しようと何度も思ったけど、なんて言ったらいいか悩んで出来なかった。」と言った。
私はその言葉を聞いて、無理もないよと思ってそう伝えた。
私が逆の立場でも、あなたと同じことを思うよと。
8ヶ月間、完全に誰とも連絡を取り合わなかった事は正解だったと思っている。

私は一回死にそうになって、こっちの世界に帰ってきた、いわば、生還者だ。
この命はもらった命だと思っている。
今回の事を笑いを交えて武勇伝として話せるようにもなった。

人間は命ある限り何度でもやり直せるし、変わっていける。
だから、もらった命をチャンスに変えて、日々生きる事を生きていく。

癌になって知ったこと。
気を使ってくれることは憐みじゃない。
愛なんだ。


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