スーツケースに心をこめて③
すべて明日からのため。
2週間以上前に、近所のクリニックで健康診断を受けて来た。
身体に気になるところがあるんだったら教えてもらった方が、対処できるかもしれないし、もし重病でもかまわないから教えておいて欲しいと思ってのことである。そうは言っても、何と言われるかはわからない。少し怯えながら診察室に入る。
医師は「検査の結果ですが、何の問題もありません」とニコッと笑った。
ほぅ、、、とため息が出た、祈る、、ずっとこれが続けばいい。
話はそれるが、体は元気でも心療内科にかかる人って結構いる。いや体と心
はつながっているから、ひょっとしたら体の健康も損なっていたのかもしれない。
学生時代あんなに元気だった人が、そういったクリニックの門を叩いたということを知ると不思議だし、人数として2、3人であっても皆んな苦労しているなと思う。私も子供が流れてしまったとき、心療内科に少しお薬をもらっていたことがある。泣いたんじゃない。目から血がこぼれたんだ。
両目から血がぽろぽろこぼれて、水たまりならぬ血だまりをつくる。
ずーっと泣いてたら、子供の夢をみた。「お母さん」ではなく「ヒトミちゃん」「ヒトミちゃん」と呼んで私の肩をさすってくれた。
まるで夫みたいだと思った。やさしい手。やわらかくてすべすべした、夫の手によく似た感触がする。夫の手をずっと握っていたい。夫が私のつま先を握るように。
子供の夢を見たのは、2、3度だった。それきり現れなくなった。
つづく(この物語はフィクションです)