スーツケースに心をこめて
私は48歳の主婦。主人と2人暮らし、子供なし。
30歳のときに第一子を流産してしまった。精神的に弱い私に対して、主人は「まだ子供は生まれるかもしれないし」とは言わなかった。ただ黙って側に居てくれて、よく体をさすってくれた。背中の時もあったし、腕だったり、そうそう、足の指も握ってくれた。綿の靴下を履かせてくれて、履かせた後最後にぎゅっと優しくつま先を握ってくれる。私はそれが好きだった。
子を亡くしてからはや18年が経つのだが、いつからか私はその子の年齢と競うように旅行を始めた