B@CK HΦME S8:01
B@CK HΦME SEASON8
安達「福岡遠征、私も同行するわ。
名店のもつ鍋、今から楽しみね」
紀行「社長、ありがとうございます。
社長室の留守番は、誰に一任されますか?」
安達「奈津子さんに書類の整理をお願いしましょう。
溜まった家事を軽減できるように、
美味しいお土産をたくさんピックアップしましょうね」
紀行「冴えてますね!
社長はサオナシラヴァーズの原案を
ご覧になられましたか?」
安達「ええ、オフィスアダチは全面協力体制よ。
抗っていた時期もあったけど、紅弥さんって、愛の象徴だと思うわ」
紀行「AFLCメンバーが団結することは、この上なき幸福です。
LGBTのことは理解できないかもしれないけど、
完成したアプリケーションはファミリー全体で共有していきましょう」
安達「原田くんが切り取るネオン街の風景も、
ゲームの屋台骨を支えていくのでしょうね」
紀行「社長とのグルメ旅行に浮かれ気味ですが、
専属カメラマンとしての自尊も一緒に連れていきます!」
安達「この会話劇はSEASON8という筋書きに
起こされる事実はご存じよね?」
紀行「熟知しております。黄泉先生の代筆原稿は、
オフィスアダチのスタッフ全員の
フィルターに通す約束になっていますから」
安達「これだけ莫大な経常利益を上げながらも、
J・K・ローリングのアパルトマンに佇む金庫の中の、
錬金原稿の様な意欲作が手元に保管できるなんて、
なんていう好条件なのかしら?」
紀行「海堂さんも、黄泉先生も、
永らく日陰を歩いてこられましたからね。
積み上げた努力の素晴らしさを物語る、
二本の有意義な人生だと思います」
1000万ドルと讃えられる北九州の夜景を味方につけて、
原田紀行は一世一代のプロポーズを巡波に捧げる。
紀行「安達輝さん、初めてGELATOを開いたあの日から、
今日まで変わらず、あなただけを想って生きてきました」
安達「嬉しい……あなたの一途な想いは、
ちゃんとこの胸に届いているわよ」
紀行「100万枚撮りのフィルムで、
あなたの生涯の全てを撮影させて下さい」
安達「純真なるその撮影技術に全幅の信頼を寄せるわ。
幸せな家庭を築きましょう」
祝福の天使が恋の鏃で、巡波のハートを見事に射抜く。
帰りの新幹線のグリーン車のシートで、
イヤホンを仲良く分け合いながら、
『CAN YOU CELEBRATE?』を
LINE MUSICでループ再生して、
深い深い眠りに就いた。
結んだ右手と左手は、強く強く体温を共有しながら。
AFLCと名付けたのは、他でもない、安達輝=星巡波だった。
オフィスアダチファミリーの生き様を克明に追ってきたが、
スポットライトが照射されていない人物は未だいるだろうか?
人の数だけ特筆すべきエピソードはあるが、全人類が主人公なら、
その肩書の意味は非常に曖昧だ。
あなたの推しメンが、どのSEASONにも登場していないなら、
オフィスアダチにリクエストメールを送ってみよう。
幻のSEASON9は、案外早く、可視化される運命なのかもしれない。