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ナイショの秘密のSECRET:47

ナイショの秘密のSECRET
EPISODE:47
二世の客寄せパンダ

桜時「一年の僕が、部長、ですか?」
先輩「皆までいわせんなよ。北条の血を引くサラブレッドくん」
桜時「北条時雨を重ね合わせるのは、やめて貰えませんか?」
先輩「文才があろうが無かろうが、お前は所詮、客寄せパンダなんだよ!」

 失意の表情で、文芸部の掃き出し窓をこじ開ける北条桜時。
女生徒 水湊未来虹(みなとみくに)が慌てて彼の背中を追う。

 放課後、人気の無い河川敷。
未来虹がとびきりの笑顔と優しさで、傷ついた桜時を包み込む。
水湊「お父様のことは仕方が無いわ。時代が認めた方なのだもの……」
桜時「二世作家は一冊売れて、あとは記憶の片隅さ。
僕の作家人生は既に終わってる」

水湊「桜時くんは、あの北条時雨が創作する環境で生育されたのだもの。
誰よりも繊細な感性を、きっと持ってる」
桜時「未来虹ちゃんも文芸部の期待の星じゃないか。
自分の将来を描きなよ」

水湊「勿論、日本最高級の女流作家を夢見てますわ。
でも、落ち込むあなたを見捨てたりはできないの……」
桜時「執筆だけが人生じゃない。
でも、さしたる進路も見えて無いけどね。
向いてる仕事もどこかにあるさ」

水湊「文芸部で発表してくれた『音頭師!危機一髪』
心温まる意欲作だと思ったわ。あなたの作品が、私の夜空の一等星よ」
桜時「女の子らしい詩的な励ましだね。
あの作品には、確かに手応えを感じてる。
でも、一発屋作家の苦し紛れの落書きなんだ」

水湊「時雨お父様だって、高校生の時分で
『ペアルック・ティーチャー』は編めなかったはずよ?」
桜時「父さんの年齢までに果たしてどれだけのアイデアが、
原稿用紙の上で具現化されているだろう?」

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