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B@CK HΦME:06
『21:幸江おばあさんと館の扉』
出会いは書店だった。
(誰かが後ろから)「おい! 小僧!」
「はっ、はひっ!」思わず背中をビクつかせる青年(原田紀行)。
「アンタ、その雑誌、買うのか?」
「え、ええと……」戸惑う青年。雑誌の表紙に「GELATO」
「買うのか? と、訊いておる!」語気を強める老女。
彼に話しかけて来たのは、どうやらおばあさんのようだ。
「かっ、買いますっ!」
脅されたからではなく、最初から買うつもりだった紀行。
「そうかい、ちょっと質問していいかの?」
そう言うと、雑誌をパラパラとめくり、
藤崎真由美のページを広げる老女。
「この娘のこと、どう思う?」
「どうって、髪型(ツインテール)が読者の間では話題に……」
「じゃあ、この娘は?」巻頭を飾る星巡波を指し示す。
「あだ(安達)……星巡波さんは別格ですっ!
潤んだ瞳が宝石のように美しく……」
うっとりした表情で巡波を褒める青年紀行。
「そうかいそうかい、この星が巡る波ちゃんも、
アンタみたいな読者が居たら、
もっともっと輝きを放つだろうね。もう四つ葉館には顔を出したのかい?」
「よつ、ばかん?」
ぽかん、とした表情の紀行。初めて聞いた単語のようだ。
「アンタ、県外の人かい?」
「は、はぁ……。先週から住居を探してこちらに出向いています」
「合格」「え? ごうかく?」
「いいから、早くレジに並んでアタシの後について来な」
これが、ぼくと幸江おばあさんとの最初の出会いで、
四つ葉館との接点でもあった。
幸江おばあさんは道中で「安達」と名乗っていたけど、
後日訪ねた館の、紺碧の扉の向こうに
あの「安達輝」が立っているなんて、一体誰が想像出来よう?
「運命」なんて軽々しく使いたくないけど、
「ぼく」と「安達」さんは
限りなく近い距離で生活をしている。
四つ葉館【AFLC】、ぼくの帰る場所。ぼくの夢と希望。
『22:職業 自宅警備員』
【赤妻短期大学】 通称……赤短 Akatan
【矢原女子高等学校】 通称……ヤバ女 Yabajo
【西京セントラル学園】通称……セン学 Sengaku
セン学男子:セントくん セン学女子:セントちゃん
相川れのは、ヤバ女在学……つまりは女子高の生徒、ということになる。
升水優美は、セン学在学……つまりはセントちゃん、ということになる。
れのには、萩原ともみという親友が居る。
優美には、谷口舞という幼馴染みが居る。
類は友を呼ぶとは良く言ったもので、
二人は……いや、二組の女子は容姿端麗と来たもんだ。
事実、ともみは「第二十三回 クィーン・オブ・ヤバ女」に輝き
事実、優美は「ミス・セントちゃん」の最終候補に残った過去がある。
れのはともみを、優美は舞を、四つ葉館に招待したのだが
社長の巡波が許可をくれたお陰で、放課後の溜まり場の様に
自由に上がり込んで良いことになった。
四人は誰一人として人見知りすることなく、すぐに意気投合!
時々、れのの弟も一緒に着いて来たが、四つ葉館の台所を借りて
五人で手軽につまめる、簡単なお菓子を作ったりもした。
世間では、こういうのを「住み開き」と呼ぶらしい。
そんな肩書きはどうでも良いが、
巡波社長は新しい雑誌の新人アイドル候補が
二人から、倍の四人になったことをとても喜んだ。渾身のガッツポーズ。
巡波はそれとなく、谷口舞と萩原ともみにグラビアの撮影を促した。
自分のポスターを広告に折り込むことに抵抗はあれど、
四つ葉館の豊富な衣装群や、紅弥の魔法のようなメイキャップに
二人(舞&ともみ)の心は盛り上がる!
カメラを構える紀行も、徐々に独特の固さがほぐれて来た。
巧みな合の手を挟む。
四つ葉館の住人も、四人の超新星も、追い風の中で日々飛躍して行った。
巡波の所属事務所も、四人の容姿を高く評価していて
「アイドルグループとしてデビューさせますか?」
本気の様な冗談も飛び交った。
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