経営判断と自分のアイデンティ再確認
私の中学生の時、私の実家の家業は、身売りをした。
明治から始まる地方都市の老舗の書店を謳っており、地域の顧客からはブランド力もあり、認知され、本屋といば〇〇っという程であった。
本店、駅前、駅ビル、県庁舎、地域SC、別地区に書店を開き、英会話塾や楽器店も開き、経営の安定化を図っていた。
2020年、マルチメディアさんの調査によると、2020年 日本の書店数1万1024店となり、2002年から半減。このトレンドは、コロナ以降さらに加速するとされている。街の書店は姿を消していきました。
理由としては、「本」は再販法により、一律利益率20%と守られているからです。利益を増やすには、①「多売」する、②顧客数を増やす、③新たな経営柱を立てるかになります。
ブログを見たあなたは、この3つの方法でどれが一番簡単で、一番難しいと思うでしょうか?
私の父は、このような書店ビジネスの悪循環を好循環。要はビジネスとしての書店を大きくするために副社長の立場(会長は祖父、社長は叔父(父から見て兄))から③新たな経営柱(コンテンツの拡充)を立てるを主軸におきました。
会長と社長は、歴史と文化を継承するため、③は限定的な判断で消極的な賛成の立場であったと父は言っておりました。
実は、経理担当副社長であった父は、金勘定が得意で、このままでは「家業」は文化の発信なんていなくなる。火の車になると焦燥感から、③の必要性を訴えていました。
書店経営は、主に2人の債権者がいます。
第一は、日頃から資金の入出金を行うためのビジネスパートナーの銀行
第二は、主たる買掛金債権者である「取り付き会社(日販、東販)」
基本的に多店舗展開を行うと、家賃や人件費、電気代などの固定費が発生します。それを、平均単価1200円=粗利240円で回収しなくてはなりません。
簡易的な損益分岐点(固定費÷限界利益率(粗利益率))を計算してみましょう。
家賃と人件費、電気を固定費として設定します。
[固定費]
家賃 1,000千円/月
人件費 3,000千円/月
電気代 200千円/月 合計 FC =4,200千円
【変動費】
10%と設定
【損益分岐点】
・固定費 ÷ (20%) = 4,200 ÷ 0.2 ≒ 売上高21,000千円/月が必要にあります。つまり、平均単価1200円の場合、約19,000人/月をレジに通す必要があります。633人/日 、52人/営業時間 → 1分あたり1顧客がレジを通す必要があります。
非常に厳しいビジネスモデルだとわかると思います。本来ここに、返済など資金もありますので、さらに必要な売上高が膨れ上がります。
ビジネスの基本は、キャッシュフローなので、赤字でもフローが流れていれば、営業自体は続けられます。しかし、コロナ禍などのビックバンが起こるとThe End。
そのため、父は粗利益率の改善に着手をします。
当時、風雲児の如く現れたC.C.C(カルチャーコンビニエンスクラブ)とコラボし、TSUTAYAビデオレンタル業に着手し、①顧客数、②単価、③新たな経営柱の改善を達成し、父の考案で、今では当たり前ですが、「営業時間外返却BOX」が生まれました。まさに顧客利便性の向上です。
しかし、会長・社長の管轄の店舗は、この革新に追随せず、旧来通りの営業を続けていました。
文化を発信する店が「アダルトビデオ」を貸すのは健全ではないとのことで、TSUTAYAレンタルは行いませんでした。
結局、父の管轄の店舗(地域外2店舗)は、売上高・利益とも毎年向上し、2店舗のみで、本店を含む4つの店舗の営業を凌駕して。しかもこの地域外店舗の人口は、当時3万人程度(現在は7万人弱)の小規模の市町村です。
その結果、社長(叔父)と副社長(父)の間は、決定的に悪くなります。ファミリービジネスの難しさです。また、債権者からも父が会社の社長になるべきだと推薦されたり、新会社を設立し、独立すべきだとも。。
結局は、会長(祖父)から、父に対して、「クビ」を宣告します。
→ビジネスにおいて、一番成果を出している人間を追放する意味が今でもわかりません。祖父は古い人でしたし、儒教を齧っていたこともあり、「長男が家督を継ぐ」という思想から抜けられませんでした。
父が書店から去り、本屋業界からも足を洗い、経営コンサルタントとして、現在も勢力的に仕事をしていますが、ここでの判断が異なれば、今でも「敏腕書店経営者」として名を馳せていたと思います。
そして、本家の「家業」の方ですが、
父が現場を離れたから、当たり前ですが、資金ショートを起こしました。
非常に残念なことに、私の本籍地(つまり、1号店)を売却しました。
これも愚策です。
商売のアイデンティティを売却するとは、何も残らないということです。
私の本籍地は、現在、駐車場になりました。本当に残念です。
そして、債権者である東販とも仲違いし、更に資金ショート。
結局、100年以上続いた書店を売却し、幕引きです。
この教訓を多店舗展開しているビジネスマンに向けて言いたいことは、
①自身の課題を見つける。→本当に多店舗展開は必要か。
②利益を捻出する方法 → 本店のクオリティを下げてはダメです。
③仕事ができる+経理的目線を持つ。
④③の人材を追放するな
⑤たとえ、事業が失敗したとしても、1号店だけは手放すな(特に地域に根ざしている事業者)
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