工場

腕を鉈で叩き落とした
案の定 新芽が切断面から萌えだした
叩き落とされた腕は シャクトリムシ
みたいに 新しい個体を探してる
珍しく宿題をやっている子の背に
登ってゆくと 後頭部に接合した
子は絶壁なので 絶壁隠しになるわ
新芽を育てながら 妻がうなずいている
シーチキンのサンドイッチできたわ
子はまったく新しい子のようだった
まったく新しい子の手に 一つ持たせてやる
子は紙と鉛筆に両手を奪われたまま
まるでサソリのしっぽのような連動で
空腹は 満たされるかにおもえた

ぼくは 週末だというのに工場へ
出かけなければならない
燃やし続けられている炉を
誰かが見守ってやらなければ
ならないからだ

第三の腕が 行ってらっしゃい
を 練習のようにくりかえす
ぼくも妻もうなずき
ぼくだけが 外に出る事になる
最初の角を曲がると 人妻が立っていて
工場に着くと 人妻は裸になり
燃やし続けられている証拠を
ぼくが見守らなければならない
ぼくの顔は常に火ぶくれをしている
じゅうぶん育った火ぶくれは
千枚通しで 穴を開けてやる
まるでカメレオンの
舌べらのようななぶり方で
いつまで経っても首までが 
しょっぱい

工場は 雲のような煙を
夕刻まで吐き続け
空をいろどる
燃え尽きたのを
たがいに 確認出来たならば
違う出口から 
それぞれが
出す

おかえり
の練習もしていたのか
行ってらっしゃい
のように手を振ってくれた
ぼくも妻もうなずき
子は まったく新しい子だった
宿題の最中だった
妻もぼくも うなずきあい
すでに しっかりとした
両腕で 妻が
ぼくの顔を
掴み 
切ると
大皿に 盛り
もも色のソースを
たっぷりと
かけた

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