サクラ
ぼくは
父も母も焼いたけれど・・
箸で骨をつまんだけれど・・
・・・・
はい、これで無事お開き
と、黒い服の人たちが
親戚顔で帰っていった晩
ぼくは、どこへ帰っていいのか
わからなかった
やさしい口調で、運転手さんが
着きましたよ
と、車のドアを開けてくれた
簡単に言えば、早く出てけよ
の、最上級の丁寧語
ぼくは白い布に包まれた
四角いお土産を
大事そうに抱えた
浦島太郎
目の前に
なんてことはない
家があって、ご丁寧に
鍵がかかっている
ポケットを探ると
ジャラジャラしたものが
あって、一番短いやつを
さして、回したら
開いた
靴は、脱ぐものだと
いつのまにか
教えられていたので
脱いで、出かける方向へ
向けた
いま、帰ってきた
ばかりなのに
もう、出て行く用意を
している
スイッチのありかも
いつのまにか
教え込まれていたので
押したら
闇のなかから
一個、部屋が、あらわれた
妙に大きく見えるテーブルに
椅子が何脚も立っていて
お土産もらってきたよ!
奥に向かって言いそうになるのを
顔の裂け目で、ぎゅっと
つぐんだ
決して開けてはなりません!
とは、誰も
言ってくれなかったので
玉手箱を、撫でる
そして、ほどき、めくり
開けると、蓋があって
開けると、丸い蓋が
またあって、開けると
さっきまで
よってたかって
つまんだ骨が
ぎっちり
つまっていた
洗面所にいき
おそるおそる
ぼくを、見ると
変わらぬぼくが
目を、反らす気遣いもせずに
ぼくを、じっと、見返していた
ここで
ぼくは、泣こうとおもった
でも、泣いてもくれなかった
誰がつけたのか
テレビが、明日のことを
教えてくれている
綺麗なおねえさんが
南の方から
そよそよと
暖かい風が
吹いてきますと
地図まで使って
そして
サクラも
まじかだと
よどみのない声で
明日からのことを
教えてくれていた
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