ふりがなにできること
7月23日に投稿した『シュネーさんのこと』は、(子どもとおとなのための童話)と題したとおり、大人にも読んでもらいたかったのですが、基本的には
「子どもに楽しんでもらおう!」
という気持ちで書いたものです。
なので、ひらがな多めで書いたのですが、それでも、ひらがなで表現しにくいところについては、難しめでも漢字を使いました。
でも、他の記事を拝見して、遅ればせながら note にふりがなを振れる機能があることに気づき、すべての漢字にルビを振って更新しました。
「ひらがなは読めるよっ!」
というお子さんに、是非、読んでもらえるとうれしいです。
感想もいただけたら、とてもとてもうれしいです。
なお、まだご存じない方は、下記の記事よりルビを振る方法をご確認ください。
さて、ということで、
「これで、小さなお子さんにも読んでもらえるようになったなー」
という感想はともかく、「ふりがなの持つ意味」というのが少し分かってきたので、そのことをお話ししたいと思います。
表現の奥行き
同じ「みどり」色であっても、いろいろあります。
文で表現するときは、修飾語句を使って表すこともできますが、端的に表したい場合は、
「緑」以外に、
「翠」(翡翠色)、「碧」(緑がかった青色)
も使えます。
ただ、子どもには難しい漢字なので、ふりがながなければ、大人が近くで教えてくれない限り、読み飛ばしてしまうでしょう。
そこで、
とふりがなを振れば、自分が普段思い浮かべる「緑」とは違うっぽい「翠」について、想像力を働かせたり、読み聞かせている大人が説明してあげたり、自分で調べて納得したりと、文字から想像する情景の奥行きが広がります。
同音・同訓異義語、音訓読み
『シュネーさんのこと』には
という一節があります。
この「うつる」は、大人でも「写る」なのか「映る」なのか
「あれっ、どっちだっけ?」
となることがあるのではないでしょうか。
同訓異義語です。
そういう単語は、漢字で書くことのほうが望ましいと思います。
そして、その漢字自体の持つイメージを持っていると、その場面の描写をより思い浮かべやすくなるとも言えるでしょう。
また、こちらは、シュネーが、仏教、キリスト教とともに、イスラム教の死生観を話す場面です。
ここの「生」についても、ふりがなを振っていなかったときは、子どもはとても読みにくかったでしょう。
「生」は、多くの「音読み」「訓読み」があるので、
「なんか『生』が並んでいる?」
となってしまいそうです。
「生」は、人生の「セイ」、一生の「ショウ」、生きるの「い」、生まれるの「う」、生い茂るの「お」、生えるの「は」、生糸の「き」、生ビールの「なま」
と、こんなに読み方が多いです。・・・というか、書いていてびっくりしましたが、すごくないですか、この多さ・・・。
これも、ふりがなで読み方を伝えられます。
「・・・せいをいきると」
と、全部ひらがなにする方法もありそうですが、意味もあいまいになりますし、「生」という漢字の持つイメージが薄れてしまって、なんかフワッとしていて締まらないです。
読み方の正解
新しい言葉に出会ったとき、どうやって読んだらよいのか分からないこともあります。
特に、固有名詞など、ひらがなで書くよりも漢字で書くほうが良いと思うのですが、かといって、紹介文を書くのでなければ、
「これは『〇〇〇〇』と読みます。」
という説明は避けたいです。
私には昔、「鬼平犯科帳」を
「キヘイハンカチョウ」
と呼んでいた黒歴史があるのですが、自分で自分を擁護するわけではないですが、やはり、ふりがなが振っていないと分かりません。
また、少し昔の話ですが、JR東日本が、現在発売中のミネラルウォーター「From AQUA」を、リニューアル前に
「大清水」
というブランドで販売していたことをご存じですか。
音読みで読みがちなのか、私は、これも当時
「ダイセイスイ」
だと思っていました。
上記にもあるとおり、
ここに至っては、販売者の思惑もあって、もともとの採水地のトンネル名とも違う読み方になっているので、正解を教えてもらわないことには、誰もなんと読んだらよいのか分かりません。
ふりがなの可能性
今まで見てきたのは、ふりがなの有用性の一部です。
「一人」「大人」
も熟字訓で、知らなければ読めませんし、
「本気」
は、漫画のタイトルにもなっていて有名ですね。
「ふりがなを振るのは、単に読み手の便のためだ」
と思っていたところもありましたが、それだけではなく、
「漢字の持つイメージを利用しつつ、さらにそのイメージを膨らませる」
という効用があることも分かってきました。
もちろん、これは「漢字とふりがな」に限ったことではなく、外国語にも使えます。
「ふりがな」のこの可能性を、少しずつ使えるようになっていきたいと考えます。