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「一票の格差問題」の行方


11月18日に発せられた尾辻参議院議長による「本案は可決されました」との注視すべきこの言葉。この瞬間、衆議院の小選挙区を「10増10減」とすることを盛り込んだ「改正公職選挙法」が成立しました。いわゆる「一票の格差」の、是正を目的としたものです。

「一票の格差」が最大3.03倍だった今年7月の参院選でも、司法が「違憲」または「違憲状態」とする厳しい判決をくだしています。一体、「一票の格差問題」とは何なのでしょう。選挙のあり方として今、何が問題で何が求められているのでしょうか。

「一票の格差問題」とは

「一票の格差問題」とは、有権者が投じる一票について、その一票を投じる選挙区により価値に違いが出るという問題です。この違いがなぜ起こるかですが、選挙区により、議員1人当たりの有権者数が違っているという選挙の実情があります。それにより、議員1人当たりの有権者数が少ない選挙区の方が有権者の一票の価値が高くなり、一票の価値に地域格差が生じているのです。

この一票の格差問題は、日本だけではなく世界中で問題になっている致し方ない問題でもありますが、それでも格差2倍が目安と言われています。言わば、1人の有権者における意見の反映のされ易さについて、平等が求められているのです。

これまでの「一票の格差問題」裁判判決

衆議院議員選挙と参議院議員選挙のどちらにおいても、裁判所の判決で違法判決が出ています。ただ、それでも実施された選挙が無効になったことは一度もありません。

7月の参議院選挙においても、「一票の格差」からこの選挙が違憲で無効だと、北海道の有権者が訴えて裁判になりました。「1票の格差」が最大3.03倍であった今回の参院選。札幌高等裁判所の大竹優子裁判長が下した判決は、この選挙は投票の価値が著しく不平等状態にあり、「違憲状態」であったとするものでした。

しかしながら、選挙無効を求める訴えは棄却されました。その理由として、「選挙制度の改革の実現は漸進的(ぜんしんてき、順を追ってだんだんと実現していくこと)にならざるを得ない」と説明されています。これは、違憲状態ではありながらも選挙を無効とするには至らないとの判断であり、なんとも歯がゆい判決と言えるでしょう。

この7月の参議院選挙については、仙台高裁の唯一の違憲判決を始め、8件の違憲状態、7件の合憲と分かれた高裁・高裁支部の判決でした。来年にも最高裁判所で統一判断が示される見通しです。最高裁でのこれまでの判決を振り返ると、衆院選参院選共に、違憲・違憲状態・合憲の判決が入り乱れています。今回、最高裁判所はいかなる判決を下すのでしょうか。

「10増10減」による一票の格差是正への試み

「10増10減」とは、地域により異なる有権者の人数を考慮した上で、選挙区の数を増やしたり減らしたりする試みです。

昨年10月31日実施の衆議院議員選挙での最大格差2.09を踏まえ、今回11月18日に成立した「改正公職選挙法」は、同月28日に公布されて12月28日の施行が決まりました。今回は初の「アダムズ方式」という新しい計算式を用いて区割り変更しています。

有権者の多い地域で選挙区を合計10増やし、逆に有権者の少ない地域で選挙区を合計10減らして格差を縮めました。選挙区数は東京都で5増、神奈川県で2増、埼玉・千葉・愛知各県でそれぞれ1増となります。一方、宮城・福島・新潟・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・愛媛・長崎各県は1減となります。

こうすることで、最大でも2倍を切るようになる一票の格差。次の衆議院選挙からこの法案が適用され、格差が是正される運びです。

「10増10減」解決策の問題点

この「10増10減」の施策により一定の解決を見れるこの「一票の格差問題」ですが、実は問題点もあるのです。

確かにこれで一票の格差は一定の範囲内に収められ、地域による偏りが抑えられます。しかしながら、東京などの人口が多い地域の議員数が増えるので、その分だけ地方の声が国政に反映しにくい状態となります。都心への一極集中を改め、地方の活性化を考えるならば、それは決して好ましくありません。

それから人口というのは常に一定ではなく、変動していくものであるため、前回が2倍以内に収まったからといって、今回も同じように収まるかは分かりません。ですので、毎回選挙区の区割りを見直していく必要が出てきます。 

まとめ

一票の格差の是正は、投票価値の平等の実現という憲法上の要請の観点から成さなければならない、民主主義国家にとっての重要課題です。自身の意見を国政に反映させるに当たり、その投票の価値が地域により偏るのは看過できない問題と言ってよいでしょう。

しかしながら一票の格差にこだわりすぎてしまうと、別の問題も発生するのです。選挙区の区割りを増やす形では、東京のような都心では自ずと議員数が増え、そのために現状の人口の都心一極集中型を国政においてもなぞる形になります。

若者離れで過疎化が心配される地方では、地方活性化による地方創生が、国全体の取り組みとしても必至です。難問でありながらもその解決を見たい「一票の格差問題」。この問題は将来のあるべき国の形を見据え、国全体の一元化の中で考えていくべき問題かも知れません。








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