turedurekimoto

turedurekimoto

最近の記事

イタコ

ある古びた商店街の出入り口付近に商店街組合に無許可で置かれた机と椅子その上には『イタコ』とだけ書かれた木札といかにもといった虚な目をした老婆が座っていた。 「あの…会いたい人がいるんだけど」 老婆は虚な目を薄く開いて目の前に立っている少年に目を向けた。 「イタコ?っていうんだよね本当に亡くなった人と話す事ができるの?」 「できますとも、出来なければ私たちに仕事なんてありませんから」 「じゃあ僕のお母さんに合わせて、お金ならちゃんと持ってるから」 少年はポケットから

    • 画面保護フィルム

      「あのーすみません、このスマートフォンに会うフィルム売ってますか?」 「お客様は今どのスマートフォンをお使いですか?」 「iPhone7なんですけど」 「大変申し訳ございません、そちらのサイズの保護フィルムは当店での販売は終了しておりまして。その代わり画面に塗るだけで画面をコーティングして保護出来るというものがあるんですが」 「あ!それ気になってたんですよね、でも本当に画面が割れたりしないのか心配で」 「それでしたらご安心ください、金づちで打っても傷一つ入ることはあ

      • 占い

        放課後まゆみちゃんとかなこちゃんはかなこちゃんのお家で遊んでいた 「かなこちゃんはO型だからけんくんとは相性がいいみたいよ」 「本当に!まゆみちゃんの占いってよく当たるって小学校でも有名だから嬉しいわ!!」 女の子は占いと恋の話が大好き、占いをして盛り上がっていると、そこにかなこちゃんのお母さんがケーキを運んで持って来てくれた。 「あら、占いごっこでもしてあそんでいるの?」 「お母さん!まゆみちゃんの占いってよく当たるのよ、お母さんも占ってもらってみたら?」 「そ

        • 遅延理由

          死ぬまでこんな仕事を続けるのかと思うと気が滅入ってきたので考えることを辞めた。 考えることを辞めると少しだけ楽になった、「死にたい」と言う割には全く死ぬ気のない自分に嫌気が刺すことも無くなった。 不謹慎な話ではあるが人身事故で電車が止まると男は少しだけ嬉しい気持ちになった。 会社に遅れて行くことが出来ると言う理由もあっただろうしどこかに自分といやそれ以上に苦しんでいた人がこの世にはいたのだと感じることができたからだ。 男は駅のホームに立ってこんな事を考えていた「結局、死ぬ

          禁煙

          男は熱心に本を読んでいた、そこにはデカデカと太字で禁煙5のメリットと書かれている。 『がん、早死にのリスクが減る』 『ストレスが減る』 『お金が貯まる』 『食事がおいしくなる』 『肌が綺麗になる』 男はその本を読んでえらく感心し禁煙をすることを誓い初めにタバコに火をつけた。

          タトゥー

          初めはそう大したことではなかった、自傷行為ほどの意味も意義もなかった。 ただなんなくそれ以外の意味もなくタトゥーを入れた。 脇腹に014と言うタトゥーを入れたがその数字にも意味はなかった、次は胸に556と入れたが勿論その数字にも意味はなかった。 次も意味もなく肩に蛇を入れた、背中が寂しくなったので蟹を入れ右肩にはハンコ注射のタトゥーを入れた。 そうするうちに体には文字を入れれる余白がなくってきた。 だが男はまだタトゥーを入れることをやめなかった脚の裏には韻と入れ目の端には鱗

          芸術的発明品

          その男は最新型のコピー機を開発した。黒、赤、青、黄色のインクで全ての色を完璧に再現出来た。その色の再現度は従来のコピー機の比較にならないほどで光の色や空気の微妙な温度の違いを色で感じられるほどに多種多様な色を作ることが出来た。 男は満足してこのコピー機に『ピカソ』と言う名前をつけて売り出すことにした。 その男は最新型のコピー機を開発しようとた。黒、赤、青、黄色のインクで全ての色を完璧に再現と言う様にはいかなかった。赤、青、黄色の色を混ぜ合わせるどころか全てを原色のままコピー

          芸術的発明品

          宇宙旅行

          これは宇宙旅行が当たり前になり、そう珍しいことではなくなった頃の話。 ある二人の男女が新婚旅行で宇宙旅行に行くことになった、男は二人乗り用ではあるがスペースシャトルを持っていたしAT限定ではあるが免許も持っていた。 何日分かの食料をスペースシャトルに積み込み星を出発した、目的地までの道のりは長かった星を出て2日ほど経った頃、猛烈な宇宙風により機体は大きく揺れ宙路から大きく外れ星の引力により機体が引き込まれある星に不時着した。 衝撃吸収装置が正常に作動したため二人の命に別状

          最新型コロナウイルス

          いくつかの恐慌を乗り越え人類が新型コロナウイルスの恐怖を忘れた頃、また新たなウイルスが流行り始めた、名前は『最新型コロナウイルス』このウイルスは非常に感染力が高かったがこれといった症状は見られなかった。 後遺症として味覚障害が現れるくらい、味覚障害と言っても味が感じなくなると言うものではなく味が感じやすくなると言うものだった。その為、政府でもこの最新型コロナウイルスに対して特別に政策が取られることはなかった。 なので人々は自粛をすることもなく今まで通りの生活を送ったマスクもし

          最新型コロナウイルス