2024年5月3日:1廻し

 彼は大声でそう叫んでいた。胸倉を掴まれた。俺はそんなことが起こりこの状況は一体何だろうと思ったが、とりあえず返答しなければと気付いた。
「違いますよ!?ここはあなたの部屋ではなく僕の部屋ですよ!それにあなたが考えたようなことはしてませんってば。飲み物零したんで後始末してたんですよ。ってかあなた誰ですか!?」
 興奮のあまり、そして相対する人があまりにも怖かったあまり一息でそんなことをまくし立ててしまった。
 それをいわれたグラサン男(仮)はポカンとした。
「え、お前の部屋、そんなことは......あ!ここ一個下の階じゃねぇか!」
 彼は玄関に戻り部屋番号を確認したあとでそんなことを言った。
 どうやら彼は俺の一個上の部屋の住人のようだ。こわいなぁ......こんな人が近くにいたなんて、もう引っ越そうかなぁ......でも引っ越す金もまとまった休日も無いしな。
 そんなことを考えていた。そんなことは今は置いといて、これでこの人は去っていくのかと思われたが彼は一行にこの部屋から出ていこうとしない。え、なんで?
「さっきは、その、悪かった。俺はいつも自分のスペースに人がいるかと思うと、つい落ち着きがなくなっちまうんだ。お詫びと言ってはなんだが、あんたに時間があるならご馳走させてはくれねえか?」
 と先ほどまでの怖そうなオーラはなりを潜め、グラサン男は物腰柔らかに声をかけてきた。

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