2024年6月2日:4廻し
彼女が大学に通いながらバイトにも精を出している姿を見て、自分とは違って頑張っていることに感心してしまい、つい口をついて出てしまった。
「えー私頑張ってるなんて思ってないよー?」
するとその言葉を受け、不思議そうに首を傾げる。人差し指を立てて頬に充てている。
「いやいや、学業も忙しいだろうに、今日初めて見たくらいですけど、お客さんのことをよく見てマニュアルに載ってなさそうな対応までやってて、完璧な接客をしてたじゃないですか」
いや、マジでお客さんごとに対応を変えて接していた。常連さんのことは覚えていて、常連さんごとに好きなキャラになり切っていた。初めて訪れてしどろもどろになっているお客さんには、いきなり距離を詰めるのではなく時間をかけて徐々に心を解きほぐしていた。
俺もほんの少しだけコンビニバイトとかやっていたが、多くの人の相手をするうちに疲れてしまい、対応がおざなりになり最終的には省エネモード(言われたことしかやらない指示待ち人間)になっていた。
そう思って俺がさっき言ったことの説明をすると、美樹さんはようやく話が見えてきたのか口を開いた。