お好み焼き
スカイツリーの近くにいた
雨の日
私は気になっている男の子とデートの約束をしていた
もう男の子とかいう歳じゃないのに、いまだに言ってしまう
気になっている男性とのデート
雨ってことを口実に
水族館に行きたいと言って
すみだ水族館に行ったのだ
すみだ水族館の見せ場は入口だと思う
天野さんが手がけたアクアリウム
自然を眺めている気持ちになるのが素晴らしい
瀬戸内海の穏やかな海のように
刻一刻と変わる夕焼けのように
天野さんのアクアリウムはずっと眺めてしまう
こんなにアクアリウムについて熱くなってしまうのは、昔付き合っていた彼氏がアクアリウムが好きだったからだ
彼とはショップに行って水草を買ったこともあるし、石や流木を並べたこともあった
でも、なんで詳しいの?って聞かれると困るから
今日初めて見て感動しましたという反応をして
他の展示より長めにみた
ペンギンコーナーの水槽の横にある少し薄暗いベンチに座った
ペンギンコーナーにはペンギンたちの性格や恋愛模様を書いた「ペンギン相関図」があって、気になったペンギンがどの子か探した
広い水槽の中で一匹のペンギンを探して、
指をさして、ふたりの指が同じものに向くのを楽しんだ
いつも自分の思い通りになるのがつまらないという顔をしていた男性は、
ドラマのような展開に憧れていた
と私は思っていた
だから、何度か会って話すようになった後も連絡先を聞かなかった
連絡先を知らないまま、鉢合わせた方がロマンチックだと思ったから
そして、たまたま会うことを繰り返した
しばらくして2人で遊ぶようになっても、
特別な食事をしたり、季節を楽しむ遊びをしたり、
会うことがイベントになるような遊び方をした
水族館を見終わった
お好み焼きが食べたくなって、
ずっと気になっていた森下にある「ぽん太」に行こうと言った
元気なお母さんが迎えてくれた
もんじゃ焼きとお好み焼きの豚チーズを頼んだ
その日は、ゆっくり話がしたかった
この中途半端な関係性に白黒つけたくなっていた
私はいつも通りビールを飲んだ
お好み焼きはお母さんが焼いてくれた
というか、絶対に自分では焼けないくらい
サラサラなのだ
ほとんどがキャベツで、粉がとても少ない
その液が固まるまでじっくり待つ
何回も焦げないのかなと心配になった
けどお母さんがひっくり返した時がベストタイミングで思わず拍手した
お好み焼きはとろとろだった
出汁が入っていて、おいしさがじんわりと染み渡る
気付いたら私たちは無言で食べていた
このおいしい時間に浸りたくなった
言葉を出す時間がもったいないと思うほど
夢中になって食べた
優しすぎて、
好きなお酒もなんだか進まなかった
気付いたら話したかった話もせずに
食べ切ってしまった
けど、なんか今日はもういいかと思った
このおいしい気持ちで1日を終わりたくなった
それに2人とも同じ気持ちだと感じた
おいしいを共有できるうれしさを感じながら
私たちは1つの傘をさして帰った
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