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Hanna the Positive Light !

個の生命と宇宙の前向きな全的肯定としてのHanna Changの音楽美学。いまのところ公開されている演奏としては、マーラー5番に最も巨大なその結実が見られるのであるが、ここではより精密に分析しやすいMozart40について書いてみたい。

第一楽章冒頭、弦楽がやさしくささやくように歌いだす。さすがに稀代のチェリストであるHannaだ。弦の処理がこのうえない。オケ全体が呼吸するようなアゴーギグ、しかしきっちりインテンポ。この提示部をはじめ、Hannaはモーツアルトの指定した繰り返しをすべて守る。そうしてハっとするほど第2主題でルフトパウゼが続く。縦の線の明快なブリッジから展開部へ。フーガの各声部が実に生き生きとしている。再現部への巧みな息といったら!泣きのコーダのアンサンブルの完璧!

歌謡楽章は天上界から降ってきたようなかぐわしく美しく...

弓たっぷりと歌、アゴーギグ効かせづらい6/8なのにたっぷりと歌いこむHanna。美しい弱音!中間部フォルテも弦がすこぶる美しい。

問題のメヌエット。最初私は早いと思った。かつて私の知っていたテンポではない。だがすぐ考え直した。これは舞曲なのである。このテンポでなくては踊れない。事実Hannaはじつにむだのない動きで音楽的指示をしながら美しく舞っていたのだ。美しく響くオケ!トリオ少しテンポ落とすがインテンポ、オケ全体がひとつに呼吸しているようだ。

終楽章の冒頭は以前から私の悩みのタネだった。妙な言い方だが、譜面通りにやれば、たとえばフルトベングラーのようなブリオを持ったトラジテというかデモーニッシュな大騒ぎにならなくて、最近のドホナーニのようなレッジェーロに近い表現になるはずなのだが、前世紀の「大指揮者」たちは「三大交響曲」のうちのト短調の悲劇性を重大視していたように思える。ここでHannaはモーツアルトの指定通り、すこぶる快速にスタッカートを連ねているが、過度に軽くならず、デモーニッシュな味わいを出すことに成功している。音楽はタイトに筋肉質に進み、ヴァイオリンもオケ全体のレガートも極めて美しい。たっぷり鳴らして私たちが「無調」と呼んでいるフレーズもたっぷり。フーガの厳しさ!コーダの生命力躍動感!

そうして私たちはHannaとともにひとつの生を生きたような快い疲労とともにこの曲を聴き終わるのだ。


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