レオナ・板橋文夫・瀬尾高志 「濤踏」アルバムリリース記念ライブ 飯田 OVER THE RAINBOW 7/23 レオナ Tap dance 全身打楽器 板橋文夫 Piano 背尾高志 Contrabass GUEST:森田修史(Tenor Sax)
四日目の夜を俺はまんじりともしないで過ごしていた。むやみにいっしょにするとバチがあたるのだが、俺は板橋文夫と山下洋輔を聴いた衝撃で、サイズを経ないでクラシックからジャズに走ったのだ。どうでもいいことなのだが、どちらも一瞬在籍だけはした音大のはるか先輩にあたる... その板橋を初めて生で聴き、なおかつ言葉を交わせるチャンスに恵まれた時どんな慄きが俺の身の内を走ったか、想像に難くないだろう。俺は森田以外全員初対面のメンバーに、手を震わせながら名刺を渡した。そしてそのリハ ―
遠慮会釈のないリハーサル。森田が煽られている ― 俺が初めて惚れた「あの」森田が現れ始めた!森田が「肉体の制約」と呼び、俺が「肉体の倫理・論理」と呼んでいる「文法」が支配する自由!俺はリハの数曲ですでにメロメロだった。
俺はどうせ役に立たないと知りながら、セットリストと印象をメモに取り、演奏風景を写真におさめていた。案の定無様に書けないでいたなんにちかのあと、それらの空虚さに身震いした。写真はやむをえずアップするし、メモも使うけれど、できる限り俺の想像の翼は広げるつもりだ。緻密なステージング・構成をあえて無視するわけだが、それはあくまで俺の文筆能力の貧しさだ。殴られてもなにも言えない。
板橋のオリジナルから始まったステージはアウトながら密なアンサンブルで始まる。板橋のソロは無調だったのだろうか。パーカッシブなプレイが続き、森田がかつての色を見せる。アグレッシブで深い瀬尾のソロ、全身打楽器のレオナ、感性が凄い。アンサンブルのカオスのあと、これまたものすごいコーダ!続いて俺にはスパニッシュモードにとれた板橋オリジナル。スペインの涙に聴こえた、優れて狂気な俺の愛するプレイ。サイズなのかアウトなのか俺には理解できない。楽曲の構成が即興的に感じた。続いてのバラードで「あの」森田がアウトに歌い上げる。板橋のプレイは俺の知っている「涙」だ。レオナの「楽器」選択はじつに巧みだ。グッドバイにも感じる哀しみ。全音域たっぷり使った瀬尾のソロも深く泣く。もういちど板橋。バラードにもかかわらずレオナのソロ、アナーキーなコーダ。南の島の音階を使った板橋の曲。鍵ハモのシンプルなプレイ。あくまでアナーキーなアンサンブル。迫りくる瀬尾の圧巻のバラードプレイ。板橋絶叫して森田イン。最後はサイズながら暴走的なアンサンブル、ジャズを超えた!
レオナオリジナルは、さながら八十八音のあるパーカッションと、手拍子・タップで始まる。全身打楽器とタップでテーマ、あふれる音楽!またしても迫りくる瀬尾のソロ。板橋ソロ。表現衝動に溢れた、すぐれて構造的なレオナソロ。ベースソロは、しかしスタティックな秩序を感じた。タップソロ、D.C. 突然のFin。瀬尾オリジナルは、瀬尾アルコから。和を感じる泣き.... 初めてだ、こんなベースソロは。裂帛の気合で板橋へ。祇園精舎の鐘を想う。森田入る。ふっと笛の音を感じる。破壊的なレオナのソロ、ここで、俺はこのバンドのできた意味がわかったような気がした。知的で構造的に感じた板橋ソロのあと、森田が最初期日本フリーのようなプレイ!途中からベースがアルコで支える。レオナのテロ!ダルセーニョで狂乱のコーダ、フェードアウト。瀬尾のちょっとしたおあそびも交じる。「プログラム」最後は、たいていの板橋ファンが思い浮かべる板橋オリジナル。板橋バース。こぶしうちがクラスターにならない。何度も川の流れが現れ、ベースフラジオのアルコソロ。森田説得力のあるロングトーン。板橋ヴォイスでレオナが「楽器」を崩し、鈴を持つ。あくまでリズム上に川の流れが聞こえる。森田がテーマをとって、奔放極まりないベースプレイ!これが森田だ!森田ブシ!板橋ブレイク!瀬尾はいり、レオナはいる。川の流れしきり。いつまでも続いてほしい瀬尾のソロ!
アンコールは、瀬尾、レオナのひとつぶだね、楓子ちゃんのよく知られてフォークシンガーの一曲、まったく年齢を感じさせない歌唱で歌いきった。
打ち上げ。バンドマンらしく気さくに接してくれるメンバーのやさしさにじわっときながら、俺はハンパな原稿は書かないぞとこころに誓った。