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活動電位を知る Part.2

「活動電位を知る  Part.1」では、イオンの移動によって活動電位が発生するようすを見てきました。今回は活動電位がどのように伝播するのかを説明していきます。

1. 一方向への伝播

活動電位は軸索の根元である軸索初節で発生します。ここで発生した活動電位は、後述する軸索終末に向かって一方向に伝播していきます。この一方向伝播が実現されるのは、チャネルの不応期と呼ばれる性質のおかげです。脱分極によって開口した電位依存性Na⁺チャネルは、電位がおよそ+30mVに達すると不活性化します。その後はしばらくのあいだ不活性状態を維持します。この期間のことを不応期と呼びます。したがって、すでに活動電位が通過した軸索のある場所ではNa⁺チャネルが不活性化されているため、活動電位が伝播することはあります。この機構のおかげで一方向に活動電位が伝播するのです。

活動電位の一方向伝播の模式図

2. 髄鞘(ミエリン)とランビエ絞輪

脳の中にはニューロンしかないと思う人もいるかもしれませんが、全くそんなことはありません。実は、ニューロンの数以上に存在するのがグリア細胞という細胞群です。かつてグリア細胞が発見された当時は、ニューロンを構造的に支持する役割をもつだけで、積極的な役割を持たない細胞とみられてきました。しかし、研究が進むにつれて、グリア細胞の果たす役割が徐々に明らかになっていき、決してニューロンに隠れた脇役とは言えないほどの存在感を発揮しています。今回取り上げるグリア細胞は、オリゴデンドロサイトというグリア細胞です。

オリゴデンドロサイトは、軸索に髄鞘(ミエリン)という脂質の層をまくというはたらきをします。もしこの髄鞘がないと何が起きるのでしょうか?発生した活動電位は、軸索に沿って伝播する間に周囲に漏電し、進めば進むほど減衰していきます。髄鞘は絶縁膜として機能し、この漏電を防ぐことができます。髄鞘は軸索を完全に周囲の環境から隔離しているわけではなく、髄鞘と髄鞘の間に、軸索が周囲のイオン環境に露出している箇所があります。これをランビエ絞輪と呼びます。ランビエ絞輪には多くのNa⁺チャネルが密に存在しており、ここで発生した活動電位は次のランビエ絞輪へと「飛ぶように」伝播します。この現象を跳躍伝導と表現します(実際には本当に跳躍しているわけではなく、活動電位の伝播を観測する際に絶縁されていないランビエ絞輪の箇所でのみ活動電位がとびとびに観測されるためこのような名称がついています)。この髄鞘のおかげで、活動電位の伝播速度は髄鞘のない軸索(無髄軸索)を伝播する場合とくらべて飛躍的に向上します。実際どのくらいの値かというと、無髄軸索では速くても2m/sであるのに対し、有髄軸索では速いものだと120m/sに達します。

3. 軸索終末

軸索に沿って伝播した活動電位はやがて軸索の末端(軸索終末)に到達します。軸索終末に活動電位がやってくると、軸索終末の細胞膜に存在している電位依存性Ca²⁺チャネルが開口します。Ca²⁺チャネルは、細胞内濃度が細胞外濃度に比べて非常に低く維持されています。このチャネルの開口によって化学的勾配により大量のCa²⁺が軸索終末に流入します。その結果、神経伝達物質を蓄えていた小胞が細胞膜と融合し、神経伝達物質がシナプス間隙
に放出されます。「活動電位」という電気信号として伝わった情報は、ここで「神経伝達物質」という化学信号に変換され、別のニューロンへと伝わるのです。

「活動電位を知る Part.2」はこれで終了です。次回は、今回詳細に述べることができなかった神経伝達物質の放出メカニズムとシナプスについてまとめていきたいと考えています。

「活動電位 Part.1」を読んでいない方はぜひこちらもご覧ください。


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