神経科学を知る

都内の大学院で神経科学を研究している院生です。日常の神経科学やそのほかの分野に関する勉強内容をまとめています。

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  • 読んだ論文まとめ

    完全自分用に読んだ論文のテーマをまとめています。

最近の記事

てんかん病理におけるアストロサイトの役割 2

前の記事では、脳のエネルギー源であるグルコースを代謝する解糖系が、てんかんを悪化させること、その療法としてケトン食や解糖系を阻害る薬剤療法について述べた。本記事では、アストロサイトネットワークを司るギャップ結合を形成するコネキシンという膜貫通タンパク質について扱う。 ギャップ結合 そもそもギャップ結合とは何だろうか。ギャップ結合は細胞間結合の形態の一種であり、この結合を介して細胞間で水溶性のイオンや分子のやり取りが行われる。そして、このギャップ結合を形成しているのが膜貫通タ

    • てんかん病理におけるアストロサイトの役割 1

      エネルギー供給と代謝 生理学的条件における脳のエネルギー源はグルコースであり、ニューロンとアストロサイトにグルコース代謝機構が見られる。グルコースは大きく二つの経路によって代謝される。解糖系とペントースリン酸化経路である。ここでは解糖系について注目する。 解糖系では、はじめにグルコースがヘキソキナーゼによってリン酸化され、グルコース6-リン酸(G6P)が生じる。その後、ピルビン酸が産生され、続いてピルビン酸はクエン酸回路(TCAサイクル)に入り、最終的に34モルのATPが産

      • Local translation in microglia processes is required for efficient phagocytosis [Abstract]

        Published : 5, June, 2023 神経細胞、アストロサイト、そしてオリゴデンドロサイトは、局所的にタンパク質翻訳を遠方制御している。本研究では、マウスの脳由来の末梢マイクログリア内(PeMPs : peripheral microglia processes) に局所的なタンパク質翻訳があるか否かを検証し、PeMPsが新たなタンパク質の合成に関与するリボソームをもつとともに、それらが病原菌に対する防御機構、運動性、ファゴサイトーシスにかかわる転写産物を伴う

        • 活動電位を知る Part.2

          「活動電位を知る  Part.1」では、イオンの移動によって活動電位が発生するようすを見てきました。今回は活動電位がどのように伝播するのかを説明していきます。 1. 一方向への伝播 活動電位は軸索の根元である軸索初節で発生します。ここで発生した活動電位は、後述する軸索終末に向かって一方向に伝播していきます。この一方向伝播が実現されるのは、チャネルの不応期と呼ばれる性質のおかげです。脱分極によって開口した電位依存性Na⁺チャネルは、電位がおよそ+30mVに達すると不活性化し

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        • 読んだ論文まとめ
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        記事

          活動電位を知る Part.1

          1. 活動電位とは何か? ニューロンは電気信号を用いて情報を遠方の細胞に伝えます。この電気信号のことを活動電位 (action potential) と呼びます。 ニューロンは核などが存在する細胞体に加えて、他のニューロンからの活動電位を受け取る樹状突起と、自分が発生させた活動電位を他のニューロンに伝える軸索を有しています。このような構造はニューロンに特異的に見られ、人体の別の細胞には見られない特徴です。 2. イオンの移動を理解する 私たちの思考や運動の根源にあると

          活動電位を知る Part.1