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もう話してもいいよね、日本国有鉄道(現JR)入社試験の話

私が中学卒業後に、進路のひとつとして選択したのは、日本国有鉄道(現在のJR)の専門学校であった。

親の勧めが強く、国鉄(*略)に入社できれば、いわゆる公務員なので一生安泰と考えたのだろう。

私は大学進学を考えていたが、年齢の近い従兄弟に、親の言う通りにして良かったと、将来思うからと諭され、国鉄を受験することにした。

私の中学校は、ひと学年が220人位、同級生でこの専門学校の受験希望者は、私を含めて2名だった。

担任の先生からは、合格したら絶対に辞退してはならないと釘を刺された。

内定を出したのに断った、という前例があると、次年度の希望者が、採用してもらえなくなるからという理由である。

競争倍率は、かなり高く7倍以上。
どうせ不合格なのに、受験する意味があるのかと考えてしまう。

とりあえず、親の顔を立てるための受験なので、まぁいいかと頭を切り替えた。

その後、親戚を巻き込んで
両親の

「必勝! 国鉄合格」


のプロジェクトがスタートするのである!!

情報収集や人脈の開拓などに奔走する母親。
ある日、叔父A・私・両親の4人で、国鉄の関係者だという方に、挨拶に行くことになった。
献上品は日本酒2本。

その人は子宝に恵まれず、叔父Aが養子縁組のお世話したことがあるらしい。

その縁で、その人と叔父Aとは親戚みたいなものだとなり、甥の私も、その人と親戚だという盃を交わしたのである。

実に、ざっくりとした方程式と献上品(日本酒2本)で、赤の他人同士が親戚になった瞬間である。

この人とは、後に再会することになります。


国鉄の受験日は、一般の高校受験より早く年明けすぐ。
受験まで、数日に迫ったある日、別の親戚から連絡が入った。

足を骨折して入院した、叔父Bからである。
病院で同室になった人が、偶然にも国鉄職員で、叔父Bが「今度、ウチの甥(私の事)が国鉄を受験するんだけど…」と話したら

「その甥に数学の教科書を持って来るように伝えて」
と言われての電話だった。

お見舞いを兼ねて、数学の教科書を片手に顔を出すと、その人は
「ココとね、ココとね、ココは勉強しておいた方がいいよ~」
と教えてくれた。

傾向と対策にしては、あっさりしすぎている…

それっきり数学の教科書を開くこともなく、初めて眺めたのは、受験前夜だった。

さて、私の学力の自己評価(50点満点)を、ここでご紹介。

国語は40点台(まあ得意な方)
数学は20~30点台(稀に10点台あり)
英語は30点を行ったり来たり(ヤマが当たれば30点台)
理科は30点台前半(化学がやや得意)
社会は30点台(ほぼ歴史だけの点数、地理まったくダメ)

受験当日は、試験問題のわかるところだけ書いて、使命を果たした満足感でいっぱいだった。

はい、不合格決定。
この件はこれで終わり!

あとは、夢の高校生活を友達と一緒に過ごす想像ばかりしていた。

万が一、万が一、試験に合格すれば、面接そして健康診断だが…。

けっっか、はぁっぴょう~!


なんと一次試験合格の通知

マジっ!!
国語は、それなりだったと思うが、他の教科は半分出来ていれば、御の字。

英語なんて、見た事がない国鉄関連のヤバい単語に、脳みそバグりまくりであった。

1ミリの可能性もなかったはずの合格を、まだ疑いながらも、二次試験の面接会場へ到着。

そこには面接官が4人、促されるままに椅子に座り、正面を見ると

居ましたよ、日本酒2本で親戚になった人が。

名札を見ると「人事課長」となっている。
にわか親戚は偉い人でした。

他の面接官から
「5教科の中で得意な教科・不得意な教科はなんですか?」
と聞かれ
「得意なのは国語、苦手なのは数学です」
と答えると
「ほう、苦手な数学が、今回満点なんですね」
と言われたのには、またまた、びっくり!

そんな事、あるかい!!


と心の中で突っ込みながらも、
待てよ、数学の問題、入院中の国鉄職員に教えてもらった箇所、そのまま全部出題されていたかも。

二次面接も合格、その後の健康診断も問題なく通過し、他力100%のおかげで『○○鉄道学園○○工場分所』という専門学校に入学が決定した。

人生とは、なかなか思い通りにいかないものだ。
この瞬間、私の希望する道は陥没したのである。

この年の新入生は30数名、4県から選抜された優秀な生徒ばかりである。(私を除いて)
ここから、国鉄専門学校3年間+国鉄職員約11年間の人生列車が発進。

ちなみに、一緒に受験した同級生は不合格で普通高校へ。
私と逆だったら良かったのに、ほんと申し訳ない…

入学して3年目の春、職場体験のため工場実習がスタート。
その時に、私の奇跡すぎた採用内定の真実が判明するのである。

この続きは、いつかまたの機会に。

★お願い★
ここまでの内容は、ノンフィクションではありますが、凶悪殺人事件でも、とっくに時効(2010年以前の法律では)を迎えているくらい前のことです。

深く突っ込まず、そんな時代があったのねと、温かく見守ってやってください。
※ちなみに、国鉄の人事課長、入院してた国鉄職員、叔父A・Bは天国でこの話を見守っているはずです。その節は、大変お世話になりました。ご冥福をお祈りいたします。


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