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キミにさよならを♯7


ーーカヲル……。

スズタニは声すら出せなかった。
必死に戦ったであろう、その傷だらけの身体を優しく抱き上げた。

ーーひとりじゃ……ないからね。

戦い果てた戦士をハイエースの後部へと乗せるスズタニ。

「能力反転解放『薬効』エデン」

カヲルの体内にスズタニの『薬効』が注ぎ込まれる。
反転解放。スズタニの初めての試み。
成功するかわからない、強烈な増強剤の投与。
スズタニがやろうとしているのは人智を超えた領域だ。

目眩がする程の疲労感。

休むことなくスズタニはスマートフォンを確認する。起動したアプリは社員全員の場所を知らせる。まるで動きがない。
表の運送業中に動きがないということは……おそらく彼らも殺られているという事になる。

「クソ……お前たち……すまない」

野郎共の顔が浮かぶ。しかし、浸っている場合ではなく、スズタニには未だやらねばならぬ事があった。

ーーカヲルを殺ったヤツは未だ居る。確実に。

「あたしの能力は更に進化する」

ーー能力解放『猛毒』

「シーリングポワゾン……デッド・エンド」


「必ず、殺す」


銃声。スズタニは避けようともしない。
肩に着弾。
飛ぶ鮮血。
肩口から埋まり込んだ弾丸を抉り出すスズタニ。その弾丸を握り締め能力を込める。

ーー出来るはずだ。カヲルの仇討ちの為に全てを賭けろ。

毒化していく弾丸、それは放った銃へも伝染していく。
放った銃へも感染する遠隔感染。
銃を使う相手のためにスズタニが能力を磨き上げた必殺にして完璧な暗殺。

無差別に広がるシーリングポワゾンの効果的利用。
しかし、能力使用の疲労は想像を絶する。命を削るほどに。

「ぐはぁぁぉぉ!!!」
何処かで男の絶叫が響く。
持っていた銃から毒感染したのだろう。
送り込んだ毒は致死100%だ。

膝を着くスズタニ。
呼吸が荒い。
心臓の鼓動が喧しくスズタニを煽る。

「はぁはぁ……やっちまったか……こりゃ身体……もたなかったなぁ……」

スズタニの身体は限界だった。
反転解放、必殺の能力解放。
休むことなく使用した狂気の能力は、身体への負担は果てしなく、命を蝕む。

「頼む……よ、カヲル。あんたを……鍛えた……のは……あたし……なんだから……さ……」

吐血の後、静かに毒の女王は沈んでいった。
その顔は、何処か安らかでーー。



𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭

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暁月夜 まくら
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