見出し画像

水面跳ねる石を見る瞳に何が映る?


『夏が始まった合図ってあった?』
ハイトーンのヴォーカルさんに聞いても答えてはくれない。


会津若松に行くって合図は貰っていたのだが、遊び歩いていたら母親からのLINEをガン無視していたようで。
【ばぁちゃんのとこ、帰ってっからね!!気が向いたら来なさい】
怒りのスタンプが山ほど付属で送られて居たのはスルーしておく。


イマイチ遅い梅雨のお陰で、夏感がないこの辺り。
北へ向かえば、湿気から逃げられるかと思ってオレも向かうことにした。

しかしーー。


蝉が鳴く。
久しぶりに大音量のアイツら。
『いつオレより先に此処に居たのよ、夏よぉ……』
灼熱の太陽は容赦無く降り注ぎ、地面からユラユラと陽炎を生む。

逃げ水という名の暑さの象徴が、オレを遠巻きで見ている。

逃げない水の中に飛び込みたくなる衝動と戦いながら行く田舎道。

河原には子供達が川に向かって石を投げて『水切り』をしている。
何回跳ねたかで一喜一憂。
コツを知っている子、知らない子とでの探り合い。
何とも微笑ましい。

思い出す。
投げるあの感覚。
あの夏に置いてきた夢。
悔いは無い。出し尽くして負けた。
それで壊れた肩なら、受け入れる。

子供達が大きく振りかぶって投げる。

それを見て、少し気持ちが揺るがされる自分が居た。


サイドスローの手首だけで投げるなら……いいか。


『おーい!オレも混ぜてくれー!』

なるべく平らな石を拾って軽く構えて、腕とスナップを使った
サイドスロー!

1、2、3……12回。

『んー!まずまず』
「すげぇ!!!にいちゃん!!」
『いいか、お前ら。投げる時にな……』

もう一度。

さっきよりもさらに回転をかける。

1、2、3……15回!

『よっしゃぁ!!』
「うおお!!!!」
「すげぇよ!!」


ーーあれ?眩しいな。いや、陽の光じゃなくて……。



そっか。



「にいちゃん!!バイバイ!また遊ぼうねっ!!」
『おう!ありがとな、おまえら』



投げ方も、生き方も。
自分の楽なやり方でいいんだよな。



『ばっちゃん!ただいま!』


あれ?オレってこんなにデカい声出せたんだな。

「あんたっ!なんかあったの?」
『ん?』
おふくろが不思議そうにオレを見る。

『ちょっと石投げてたら、すげー眩しくていいもの見て来たわ』
「ええ?なによ、それ?」
『オレにしか見れないもんだよ』

自分に出来ることを。
工夫することを。
楽しむことを。

それで誰かが笑ってくれたら、
最高だ。



これも親友よりお題でした。
┏○ペコッ

いいなと思ったら応援しよう!

暁月夜 まくら
サポートなんてしていただいた日には 小躍り𝑫𝒂𝒏𝒄𝒊𝒏𝒈です。