夕刻散華。【春弦サビ小説】
「あんたが来た所為で!ねぇ様は連れて行かれたんだぞっ!」
泣きながら『弥助』は言う。
飢えて倒れかけていたこのオレを救ってくれた娘、『櫻』は借金の形で遊郭へと連れて行かれたという。
「弱っちいあんたに出来るわけないだろっ!!」
弥助はまた泣く。
その姿を背に遊郭へと向かって走る。
艶街まで行く道のりで、『櫻』に追いついた。
「櫻……弥助が心配している……帰ろう」
櫻を取り囲む浪人達が息巻く。
「なんだぁ!?貴様」
「良からぬ生業で娘を食い物する悪鬼に名乗る名などない」
言葉終わりに抜刀して、息巻いて迫ってきた輩を一閃する。
男から覇気が迸る。
輩の頭らしい男の咆哮。
「殺っちまえ!野郎共!」
その声に反応する浪人達は一斉に刀を抜き向かい来る。
久しぶりに刀を抜く。
オレの刀は……ただの凶器だ。
浪人10数人との大立ち回り。
響く金属音、舞う紅、倒れゆく男達。
しかし、多勢に無勢。
無傷でなどいられない。
オレに届く斬撃も今は痛みは無い。
集中しろ。
この外道を屠るためにだけに集中するんだ。
『櫻』は行かせない。
用心棒であろう輩を斬り伏せ、残るは頭ひとり。
当然の如くに『櫻』を盾にする。
「この女ぁ、殺すぞ!近付く……」
頭の男が言い終わる前に、神速の刃が『櫻』の横から突き出されている顔に突き刺さる。
目にも止まらぬ突き。
『櫻』には自分に向かって突風が吹いたとしか思えなかった。
「 神威」
オレの目の前に『櫻』が居る。
だが、オレは『櫻』に触れてはならない。
血塗られたオレの手にはサクラは似合わない。
「あ、あの……」
「弥助が待っている、家へ戻るといい」
「あなたは……?」
男は哀しく微笑み、
「また流浪れていくだけでごさるよ……世話になった」
ーーこの笑い方……。
『櫻』は幼い頃、共に遊び、時には
守ってくれていた幼なじみと気付いた。
去ろうとする男に向けて、『櫻』は呼びかける。
「待って!!冬夜」
舞う桜の花びらにもオレは触れない。
サクラを汚したくないからだ。
男は静かに夕闇に消えていった。
作詞: 歩行者bさん
作曲:大橋ちよさん
弾き語り:大橋ちよさん
疲れているけど、書きたい気持ちが強過ぎたぁぁぁ!!!(笑)
最大のリスペクトを込めて。
┏○ペコッ