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白い服の女。

だいぶ前の話で、わたしが夜勤をやって頃。
夜勤明けでほとんど寝ないで帰ってきたんだけど。
髪が伸び放題で今日こそ髪を切らなアカンと思ってて。

夜勤明けだから、朝10時くらいだったかな。
ちょっと床屋さんも開いてて、うちのマンション出ると正面が国道でちょっと左に横断歩道。
道路渡ると床屋さんで、凄く近いから行くのに苦ではなかったんだわ。

帰ってきてすぐ、家には寄らずにそのまま床屋に行こうとマンション出たすぐの信号を待っていたんだけど、
待ってる間、流石に眠くてぼーっとしてたみたいなんだわ。

ふと、横断歩道渡った向こうの道、床屋さん側の歩道ね。
右手に後ろを向いた白いワンピースを着た長い黒髪の女の人が立ってたのが見えて。

何の気なしにぼーっと見てたんだけど、この人「振り向いてくれないかな」って思い始めたのよ。理由は分からない。

かなりの時間見ていた気がするんだ。それでもその人は振り返らないし動く気配もない。

ここで急に思い出すんだけど、わたしは床屋にいくんだったと信号の方に向き直ると……。

信号は赤のまま、わたしは道路の真ん中に立ってたのね。
傍から見たら、ぼーっと赤信号で渡っていく男に見えたはず。

車が来てなかったから、急いで対岸に渡って……
女の人の居た方を見ると、姿はなかったのさ。

あぶねーあぶねーと思いながらも床屋で髪切ってうちに帰ったら、母親がいきなり。
「昨日の夜中大変だったのよ」

聴くとマンションの上から飛び降りがあって、うちのマンションの入口に落ちたと。
わたしが、信号待ちしてた右後方に落ちた人が居たらしい。

わたしは母親に訪ねたんだ。
「それって、女の人?」

「え?あんたなんで知ってるの?夜勤だったのに」

わたしはその人に連れていかれそうになっていたのかもしれない。

[完]


ちょこれいとさんに怖い話聞かせてくださいと言ったら、載せてくれたのでお返しの実体験を。
ちょこれいとさん、ありがとうございました!

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暁月夜 まくら
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