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麻美の途方もない1日。♯2



改札を飛ぶように抜けて、ホームへ走る麻美。
電車が到着した音がする。
ロスタイムは少しでも短く、そんな思いで飛び乗る電車。
すぐさま閉まるドア。
「乗れた、よし」

麻美の思考が走る。

10パーセントあったのになんでこんなに早く……。
あ、音楽聴きながら寝落ちしたんだ……。イヤホン吹っ飛んで無かったから忘れてたけどかけっぱなしのまま再生され続けてたんだ。そらなくなるわな……。

思考も走るが電車も走る。
華麗に途中駅を通過して。

ーーへ?なんで?
「特急ぅぅぅ!?!?」
と叫びそうになった麻美は無理矢理声を飲み込んだ。
各駅停車のつもりで飛び乗った電車は特急電車。水族館の駅を通り過ぎて彼の駅をも通り過ぎてその先でしか停まらない。
ーーしまったあぁぁぁ!!なんも見ないで飛び乗ったぁぁ!!

無情にも過ぎゆく水族館の駅。

ーー何をしてるんだあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!わたしはア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!

最短で彼の元へ行く事は出来なくなった。どれだけ遅れる?
連絡も出来ない。冷静に考えなくてはと焦る麻美に冷静さは無い。

ーーとりあえず、停車駅で反対側のホームに走って、乗り直して向かう!それがいちばん速い!

電車の中でソワソワと停まるのを心待ちにしている麻美は、ちょっとした不審者だ。
開くであろうドアの前で、落ち着かない。傍から見たら御手洗でも駆け込みそうなテイだ。

ーー着いた!
競馬のスタートよろしく、開いたドアから飛び出した。
3番、アサミネボウ、順調に階段を上り向かいのホームへ。
完全逃げ切り態勢の独走だ。

ーーあ、れ?
向かいのホームは人だらけ。
電光掲示板には途中駅での車輌点検。
現在運行見合わせ中。
「ぐはぁア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
ーーどこまでツイてないんだ!わたしは!

改札へ走る麻美。
駅員さんを取っ捕まえ、問う。
「あの!〇〇駅に行きたいんですけど!電車止まってて」
「申し訳ございません。お待ちいただくか、駅を出たバスターミナルからのバスが振替輸送をおこなっておりますので」
捲し立てるようにバスの乗り場を聞いて、改札を飛び出す麻美。

ーー電車よりは遅いかもだけど、向かえる分マシなはず!

10番のりばへ。
「ちょーどバス来てるじゃないかっ!ラッキー!」
不運続きの中の幸運についラッキーと叫んでしまう麻美だが、今までの不運と不注意を取り返すほどの幸運ではないことは確かだ。

ーーあ。
既に満員御礼すし詰め状態の車内。
「お嬢ちゃん、ごめんなさいね。振替輸送の影響で満員になってしまってて、次のバスでお願いできますか?」
「あ……はい……」

ーー絶望。
10:57

ーーもー!!!どーしたらいいのよっ!!!



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暁月夜 まくら
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