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坂道で遠ざかる君を見てた

SpecialThanks by @sorani___ao
From Twitter【X】

いやはやね、この方の写真を見る度にね、遠いあの日な記憶が蘇るんでやんすよ。
ん10年前のあの記憶。
それほど時間が経っても消えないってのはきっと小生の初恋ってやつだったんでしょうねぇ……。

なんだか知りませんがね、遠いあの頃の記憶はねこんな青空なんでやんすよ。

SpecialThanks by @sorani___ao

ーー小学校5~6年ともあれば、クラスいや、クラスを飛び越えて、やれ誰が誰々を好きだとかって話が耳に入ってくるわけで。

小生は、そんな話にはとんと疎かったもんでね、それを聞いたとて、はて?ってか具合でイマイチ、ピンと来てなかったんでやんすよ。

そんな中でね、クラスの中でお嬢様ってあだ名の女の子が居たんですがね。野郎ばかりと話していた小生とわりと話をする女の子だったんですわ。

勘のいい皆様方におかれましては、だいたい想像のつくお話でしょうが、まぁ、その通りだったみたいでね。お嬢様はどうやら小生を好いておったらしいんでやんす。

この話聞いたのはだいぶ後になってからで、その頃の疎い阿呆な小生には知る由もなくてね。
ひと言ふた言、言葉を交わすくらいだったんでやんす。

夏のドッチボール大会みたいなイベントがありましてね。高学年で急激に肩が覚醒した小生は、阿呆みたいな豪速球を投げれるようになってましてね。最強と言われてる野郎とタメはってやりあったんすよ。

クラス対抗だったもんでね、そいつに勝てば優勝くらいの勢いだったもんですから、そりゃ盛り上がったわけですわ。
なんせ、小生は運動的な何かで目立ったことがなかったもんでね。急にHEROになっちまいまして。

ですがね、相手は取るのも上手くてね。
最終的には負けちまったんでやんすよ。
「負けちゃったね、でも……すごかったよ!」
ここで気の利いた台詞でも吐けりゃ面白いとこなんですがね、負けたのが悔しかったみたいでね。
「うん」みたいなつまんねぇ返事くらいしか出来なかったんでやんすよ。


SpecialThanks by @sorani___ao

ーーとある日の放課後。

下校前にね、友達が腕相撲にハマってましてね。
小生に勝負を挑んでくるんでやんす。
ドッチボール大会であんだけぶん投げられるんだから強いだろうと思ったんでしょうね。

小生、たいして腕力には自信なかったんでやんすけど、それなりに力はついてたみたいでね。
そいつに負ける事が無かったんでやんす。

それをお嬢様が見てね
「勝てるわけないじゃない」と笑顔で友達に言うでやんすよ。

ここで小生、少しばかりね。
少しばかり、お嬢様が気になってしまったんでやんす。実際、お嬢様って云うあだ名が付くくらいでやんすから、可愛らしい子だったわけでね。

「勝てるわけ無いじゃない」って言葉を嘘にしちゃいけねぇと思ったでやんすよ。
「いつでも来いよ」なんてカッコつけることを覚えた瞬間でもありましたわ。お恥ずかしいですがね。

来る日も来る日も勝負を挑んでくる友達なんですがね、来る日も来る日も相手にしてる小生も力がついてくるわけで。
まぁ~負けなかったんですわ。
お嬢様居ない時もありましたが、負けませんでしたねぇ。

「鍛えて来るからな!それまで待ってろ!」
と、ある日負けた後の捨て台詞を残して悔しそうに教室を出ていった友達。連敗が余程悔しかったんでしょうねぇ。

卒業ちょいと手前のある日に。
「今日は勝つ!」と久しぶりに腕相撲を挑んできた友達。
こんな自信満々な友達の覇気全開の時にお嬢様も居る。鍛えて来たってのは嘘じゃなさそうでねぇ。

右手を差し出す友達に自信が漲ってるんですわ。
男として引く訳にはいかんでしょう??
腕を組んだ瞬間にね、
ん?いつもと違うなって思ったでやんす。
今思うと、握り方研究して来てたみたいでね。
小生の力入りにくいように握ってやがったんですわ。

友達はお嬢様に「レディゴー言って!」なんて巻き込むもんだから、余計に負ける訳にはいかなくなったわけで。
いつになくニヤけてる友達とちょいと焦ってる小生の事などつゆ知らず。
「レディゴー!」とお嬢様の声。

思うように力が入らなくて一気に友達に机まで持ってかれたでやんすが……。
小生にも意地があるでやんす。ギリギリで持ちこたえて秒殺は免れたでやんすが……。

絶体絶命は間違いないわけで。
クソほど体重乗せて、とどめを刺しに来る友達!
ここで小生、本当に今でもわからんのですが。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!!!!!」
雄叫びみたいなのを上げながらOver The Topぶちかましたでやんすよ!

どっからそんな力が出たのかわからんのでやんすが、友達の手を机に叩き付けて。
「俺の勝ちな」
と、大焦りのカッコつけで友達は肩を落として
「最後まで勝てなかった」と落ち込んでましたがね。次やったら君の勝ちだよと心で思ってたでやんす。

お嬢様「すごーい!!やっぱり強いね!」と笑顔を振りまくもんだから。
小生、満更でもなかったでやんす。
痛めた腕を隠しながら。
ーー嘘にしないで良かった。


ーー卒業式。
小生の小学校は小高い丘の上にあるでやんす。
裏口は校庭に通じる階段。
正門は国道に通じる坂道。

今なお、現存してるんでやんすが、少子化の波を受けてあの頃の賑わいはないかもしれないと少々切ない気持ちになりますがね。

だいぶ変わったあの坂道。


卒業の季節には桜が咲くでやんすよ。
裏口、正門両方に桜が咲いて綺麗でねぇ。

SpecialThanks by @sorani___ao


卒業式後、親は共働きなもんでね、式終わったらすぐに仕事に戻っていってね、ひとりで帰ることになったでやんす。
帰り道は正門側でね。

こんな綺麗な桜が咲いててねぇ。正門に花びらが舞っててねぇ。
その先をーーお嬢様が歩いてたでやんすよ。



ーーあ。

ゆっくりと坂道を降りていくお嬢様。
俺もゆっくり降りていく。
舞う花弁と前を行く揺れる赤いランドセル。

どうしてだろう?
距離を詰めて近付く事が何故か出来なくてーー。

お嬢様の歩幅に合わせて一緒に歩く。
お嬢様は俺に気付くことはなく、ゆっくりと坂道を下って行く。

ーーあ……。
まぁ、中学で会えるからいいか。

お嬢様の背中を見ながら、俺もゆっくり花弁の中を行く。

坂を降り切ると国道。
お嬢様の家は右。
俺の家は左。

一足先にお嬢様は右手に折れて国道を行く。

姿が見えなくなったお嬢様を追うように少し早足で坂道を降りて俺も国道へ。

右を見て、お嬢様を見送った。見えなくなるまでーー。

中学校にお嬢様の姿は無かった。
結構探した。
それでも見つからなかった。後で知った話だが、どうやら私立の中学へ進んだらしい。

ーー坂道で遠ざかる君を見てた。

そんな昔の初恋のお話。


SpecialThanks by @sorani___ao


もう辞めてしまったTwitter【X】にてあげていたものを復刻しました。
Twitter【X】でご活躍のphotographer『空に青』様より写真使用の許可はいただいております。
素敵な写真に言葉を添えてたくさんあげてます。Twitter【X】を利用されてる方、よろしければ観てください。
素敵ですよ。

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暁月夜 まくら
サポートなんてしていただいた日には 小躍り𝑫𝒂𝒏𝒄𝒊𝒏𝒈です。